国会質問が売り買いされ、脱炭素社会実現の「切り札」とされる政策がゆがめられたのなら極めて悪質だ。再生可能エネルギー推進にも水を差す。癒着の構図をつまびらかにする必要がある。

 東京地検特捜部は7日、洋上風力発電事業に絡む国会質問の見返りなどで日本風力開発側から約6100万円の賄賂を受け取ったとして、受託収賄容疑で衆院議員秋本真利容疑者を逮捕した。

 秋本容疑者は2019年2月~22年2月ごろ、日本風力開発の塚脇正幸前社長から数回にわたり、風力発電事業で同社が有利になるよう国会で質問してもらいたいと頼まれ、現金3千万円を無利息無担保で借り受けた疑いがある。

 借りた3千万円は、秋本容疑者が日本中央競馬会に個人馬主の登録申請をする要件を満たすために必要だったとみられる。

 21年10月~23年6月ごろ、共同で設立した競走馬の組合に関する資金などとして、総額3100万円を受領した疑いもある。

 個人的な趣味に絡み、国会議員と業者の間で巨額の資金が動く実態にあぜんとする。国民感覚とあまりにかけ離れている。

 秋本容疑者は自民党離党前、党の再エネ普及拡大議員連盟で事務局長を務め、洋上風力発電の国会質問を繰り返していた。

 19年2月には衆院予算委員会分科会で、日本風力開発側が参入を検討していた青森県の海域で過度な規制をしないよう求めた。

 21年12月の洋上風力発電の第1弾入札で、三菱商事などの企業連合が3海域全てを落札すると、秋本容疑者は22年2月の衆院予算委分科会で、事業者公募の評価基準の見直しを要求した。

 驚くのは、基準がその後、早期発電が可能な事業者の優遇や、一つの企業連合が落札できる規模を制限する内容で見直された点だ。

 第2弾入札の公募が開始された後での見直しとなり、改めて公募されるという経緯をたどったことも異例と言える。

 第1弾入札には、日本風力開発などが強く反発していた。

 特捜部の調べに塚脇氏は「資金は質問の謝礼」と説明している。

 一方、秋本容疑者は弁護士を通じ「謝礼として賄賂を受け取った事実はない」とコメントした。

 しかし国会質問の内容やタイミングは、日本風力開発に有利な環境整備につながって映る。

 外務政務官を辞任し、自民を離党したとはいえ、秋本容疑者は岸田政権の一員だった。政治とカネを巡る不祥事であり、岸田文雄首相は任命責任を問われる。

 ただ、脱炭素化が急がれる中、事件の影響で再エネ普及がストップするようでは問題がある。

 再エネは政府が推進する成長分野で間違いない。それだけに、政治家は襟を正し、利権と一線を画さなくてはならない。