新潟市の拠点性向上や交流人口の拡大に向け、長年の懸案である中心市街地活性化に具体的な道筋をつけられるか。そこを注視したい。

 新潟市が15日に発表した2022年度当初予算案は、一般会計総額が3922億円で、21年度当初比1・4%、56億円のプラスとなった。

 当初予算案としては、過去最大だった17年度の3975億円に次ぐ規模だ。

 新型コロナウイルス対策と経済活性化の両立を図り、「選ばれる都市」に向け幅広い分野に配分したのが特徴だ。

 そのせいだろう。「目玉施策が見えない」との指摘があり、総花的な印象も否めない。

 今年秋には市長選が予定され、中原八一市長が再選を目指すかが焦点となる。そうした事情を背景に、特定の地域、業界への肩入れと捉えられることを警戒したとの見方もある。

 今回の柱となっているのは、中原市長が打ち出した都心のまちづくり「にいがた2km(にきろ)」事業だ。JR新潟駅周辺-万代-古町の都心軸を活性化し、市域全体に活力を波及させる構想を指す。

 22年度は新潟駅の在来線ホームがすべて高架化され、周辺整備も進むため、市は都心エリアを軸にしたまちづくりが大きく動き始める年と位置付ける。

 新年度予算では高機能オフィスの整備や企業誘致などの事業に28億円を計上した。

 新潟市は公示地価で仙台市、金沢市などライバル都市に水を開けられている。

 反転を目指すためにも、都心軸再生を呼び水に民間投資につなげ、魅力ある雇用の場づくりや人口増などに結び付けなければならない。

 懸念されるのは、旗振り役である市と市民の意識に温度差があることだ。

 昨年本紙が行った市民対象の調査では「にいがた2kmを知らない」との回答が多く、その理念が十分理解されているとは言い難い。

 一層の情報発信に努め、関心を持ってもらえるよう機運の醸成が欠かせない。

 市民生活を滞らせないために、ウイルス対策を着実に進めることも不可欠だ。

 新型コロナウイルス対策では感染拡大防止と経済社会活動の再興に68億円を盛った。

 ワクチン接種を巡っては、当初混乱もあり、中原市長は市役所の縦割りの弊害を原因に挙げた。着実な接種体制の確保へ取り組みを進めてもらいたい。

 市政の大きな課題の一つが財政健全化だ。財政調整基金など主要3基金の残高は22年度末に109億6100万円となり、当初目標としていた80億円を達成できた。

 20年2月に発表した「集中改革プラン」の下で歳出削減に取り組み、一定の成果を出した格好だ。健全な財政運営があってこそ、持続可能な市の将来を描くことができる。

 安定した財政に引き続き目配りが欠かせない。