予算規模が一段と膨らむ恐れがある。借金頼みの予算編成をいつまで続けるのか。一層の財政悪化は避けなければならない。

 財務省は、国の2024年度一般会計予算の概算要求総額が114兆3852億円となり、過去最大を更新したと発表した。

 岸田政権が重視する防衛力強化で防衛費が過去最大となり、高齢化で社会保障費も増加した。

 金利の上昇で借金に当たる国債の利払い費が増え、返済の費用を合わせた国債費も伸びた。

 税収で歳入を賄えなければ、国債を大量発行して穴埋めする公算が大きい。借金に依存するいびつな予算が続くのは必至だ。

 膨張した要因の一つである防衛費は、防衛省が7兆7050億円と過去最大額を求めた。

 政府は23~27年度の5年間の防衛費総額を約43兆円とし、中国や北朝鮮を念頭に抑止力を強化する。財源確保策の増税は25年度以降への先送りが見込まれる。

 ミサイル防衛能力の強化に向けた「イージス・システム搭載艦」2隻の建造費や、極超音速兵器に対処する新型迎撃ミサイルの日米共同開発費なども盛った。

 軍拡競争を招く懸念がある。自衛隊にとって過剰な装備にならないか見極めが不可欠だ。

 省庁別では金額が最も多かった厚生労働省が33兆7275億円を計上した。財務省は国債費を28兆1424億円とした。いずれも前年度より伸びている。

 危惧するのは、予算のさらなる上積みが確実視されることだ。

 少子化や物価高対策といった岸田政権の看板政策は、概算要求段階では金額を示さない「事項要求」の位置付けで、内容と金額は年末までの予算編成で詰める。

 防衛関連では米軍再編関係経費の地元負担分も事項要求だ。

 鈴木俊一財務相は「事項要求があるからといって全体の予算規模の拡大につながることはない」と話したが、果たしてどうか。

 過去最大だった23年度予算は114兆3812億円で、概算要求総額より約4兆3千億円多くなった。この時も防衛や物価高対策の事項要求が目立った。同じことが繰り返される可能性はある。

 岸田政権は、6月に決めた経済財政運営の指針「骨太方針」で、新型コロナウイルス禍で膨らんだ歳出を「平時に戻す」とした。規模によっては整合性が問われる。

 膨張する財政を支える国民の負担が増えていることも忘れないでもらいたい。

 22年度の国の税収は71兆円超と3年連続で過去最高を更新したが、物価高で国民から徴収する消費税が伸びたのが要因だった。社会保障給付が増加し、国民が納める社会保険料も伸びている。

 予算編成作業では、施策をしっかりと選別し、無駄のない予算になるよう心がけねばならない。