新興・途上国の興隆が目立った首脳会議だ。世界的な課題の解決に有効な手だてを見いだせないことも浮き彫りになった。
先進国や新興国の枠を越え、国際協調による平和と安定を国際社会で実現してもらいたい。
日米欧の先進国に新興国を加えた20カ国・地域首脳会議(G20サミット)が9~10日、インドの首都ニューデリーで開催された。
ウクライナ危機を巡って合意が困難だともみられていた首脳宣言は、初日に採択して公表する異例の形となった。
侵攻を続けるロシアを名指しで非難することを避け「全ての国は領土獲得のための威嚇や武力行使を控えなければならない」などと表現するのにとどまった。
昨年11月には「ほとんどのメンバーがウクライナでの戦争を強く非難」と明記した首脳宣言を出していただけに後退感は否めない。
参加国の利害が絡み合い、ロシアへの直接の非難を避けなければ首脳宣言をまとめられない実情が鮮明になったといえる。
ただ、今年のG20は複数の閣僚会合で、侵攻について日米欧と中国・ロシアの意見が対立し、共同声明を出せなかった。
首脳会議で合意を優先し、宣言採択に導いた議長国インドの役割は大きい。一方、ウクライナは落胆を示し、禍根を残した。
サミットには、中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領は欠席した。
両氏は先月、中ロとインド、ブラジル、南アフリカの新興5カ国(BRICS)が開いた首脳会議には参加している。G20軽視を印象付けた対応だ。
ロシアとその肩を持つ中国は、先進国主導の国際秩序から距離を置く「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国を陣営に取り込もうと躍起になっている。
今回のサミットではアフリカ連合(AU)の加盟が決まり、新興・途上国の勢力が拡大する。AUが中国・ロシア寄りになれば、先進7カ国(G7)の発言力低下は避けられないだろう。
次期G20議長国ブラジルのルラ大統領は「分断されたG20には関心がない」と強調する。格差や飢餓問題を優先課題に挙げ、ウクライナ侵攻の議論には消極的だ。
G20は世界経済と金融の安定を目指して始まった。G7が主導する流れが転機を迎えそうだ。
首脳宣言は世界経済について「成長と安定に対する逆風は続いている」と指摘したが、具体的な合意形成には至らなかった。
ウクライナ危機に伴う食料やエネルギー価格の高騰、物価高が各国の経済を直撃し、欧米中央銀行の急速な利上げは世界経済を冷え込ませる要因となりかねない。
厳しい経済情勢を認識し、懸案を解決するために協議するG20であってもらいたい。
