収穫の秋、実り具合が心配なのは猛暑と水不足に見舞われた農作物だけではない。今季は、クマの餌になるブナの実が3年ぶりの凶作になりそうだ
▼腹をすかせ、人里に下りる個体が増えるかもしれない。ブナが凶作の年は人身被害が増える傾向がある。南魚沼市では今月初め、住民がクマに襲われ負傷した。目撃情報は連日のように聞こえてくる
▼イノシシの目撃も相次ぐ。今秋は平野部も含め、クマやイノシシ出没に例年以上の警戒が必要になりそうだ。野生鳥獣による農作物の食害も毎年かなりの額が報告されている。本県の21年度の被害額は約2億5千万円。このうち3割余はイノシシによる
▼猛暑による不作に加え、食害も増えたとあっては農家は泣くに泣けまい。人や作物の被害を防ぎ、集落の所得向上にもつなげる一石二鳥の手だてとして、国は「ジビエ」と呼ばれる野生鳥獣肉の利用拡大を目指している
▼捕獲したイノシシやシカ、クマなどの肉をレストランで提供するほか、ペットフードに加工する試みが進む。県内でも十日町市などで取り組みが広がりつつある
▼魚沼市の奥只見で代々マタギだった男性のお宅で、クマ鍋を振る舞ってもらったことを思い出す。猟の思い出も聞いた。クマに襲われた父を背負って下山したこともあったという。そんなつらい経験をしながらも、男性はしみじみと語った。「おらたち、山と川に生かされてんだ」。野生動物とどう生きるか。自然豊かなこの郷土でこそ、真剣に考えなければ。