初入閣が多く、新鮮さをアピールしたのだろうが、政権の骨格は維持され、刷新感に欠けると言わざるを得ない。国民には何のための改造かが分かりにくい。
国内外には先送りできない課題が山積している。誰もが安心して生活できるよう、起用された各氏は責任を自覚し、国民の負託に応えねばならない。
岸田文雄首相は13日、内閣改造と自民党役員人事を行い、第2次岸田再改造内閣が発足した。
閣僚では鈴木俊一財務相と西村康稔経済産業相、河野太郎デジタル相、高市早苗経済安全保障担当相ら6氏が留任した。
総点検が続くマイナンバーカードや東京電力福島第1原発の処理水放出などで継続性を重視し、担当閣僚を留任させたとみられる。
党役員では、麻生太郎副総裁と茂木敏充幹事長、萩生田光一政調会長、高木毅国対委員長を再任、選対委員長だった森山裕氏を総務会長に横滑りさせた。
党内第2派閥を率いる麻生氏と第3派閥領袖(りょうしゅう)の茂木氏のほか、最大派閥の安倍派では有力者「5人組」から萩生田氏、西村氏らを続投させた。
安倍、麻生、茂木の各派が第4派閥の首相を支え、共に主流派を形成する構図は変わらない。
来年9月の党総裁選を優位に進めたい岸田首相の思惑が透ける。総裁選へ向け安定した政権運営を狙ったものとみられる。
前回総裁選を争った河野氏と高市氏を閣内に残したことも、両氏の総裁選へ向けた動きを封じ込めるためとも指摘される。
首相は記者会見で「変化を力にする内閣だ。強固な実行力を持った閣僚を起用した」と述べた。
支持率低迷にあえぐ首相が政権浮揚を図れるかは、着実に課題をこなしていける体制になるかにかかっている。
物価高に対応した経済対策や緊張感が高まる防衛問題などにどう対処するかも焦点だ。
先送りしてきた次元の異なる少子化対策や防衛財源の議論を早急に進めねばならない。
注目は、加藤鮎子こども政策担当相ら過去最多に並ぶ5人の女性閣僚を起用したことだ。
世界経済フォーラムの調査では、日本の政治分野での男女平等度は146カ国中138位で最低水準だった。女性の議員や閣僚が少ないことが要因だ。
今回の起用が、経済など各分野で女性が活躍できる社会につながるよう期待したい。
選対委員長に就いた小渕優子氏は、2014年に関連団体の政治資金規正法違反で閣僚を辞任したが説明不足が指摘されている。
昨年の改造後には、不祥事発覚などで閣僚のドミノ辞任が起こり、国民の政治不信を増幅させた。
同じ轍(てつ)を踏まぬよう首相は緊張感のある政権運営が求められる。
