自然が猛威を振るい、多くの人命が失われる事態に胸が痛む。救援や復旧、復興へ、国際社会は連携し力を合わせたい。

 北アフリカのモロッコとリビアが相次いで災害に見舞われ、甚大な被害が生じている。

 モロッコでは8日(日本時間9日)にマグニチュード(M)6・8の地震があった。

 震源地の中部ハウズ県など山間部の被害が大きく、発生から1週間で3千人近い死者を数える。負傷者は5千人超えた。

 行方不明者の捜索は難航し、被害の全容は見えていない。

 震源付近では100年以上、大きな地震の記録がないという。現地には日干しれんがや石積みの建物が多い。揺れに弱く、余震による新たな被害が心配される。

 都市部から山間部の被災地に続く山道は狭い上、土砂崩れなどで寸断された場所もある。

 支援は停滞気味で、食料やテント、毛布などあらゆる物資が不足している。地震のショックや避難生活のストレスで体調を崩す人も多い。乾期が終われば衛生環境の悪化が懸念される。

 被災者には過酷な環境と言える。物資や医療などで国際社会の継続的な支援が必須だ。

 リビアでは、11日に洪水被害が確認された。国際赤十字・赤新月社連盟によると、これまでに死者は1万1千人を超え、行方不明者は約2万人に上るという。

 数日前から大雨が続き、東部デルナでは枯れ川の上流域にあるダム2基が決壊した。

 政情不安が被害拡大を招いたと指摘される点も見逃せない。

 リビアは中東民主化運動「アラブの春」後の内戦の影響で、停戦後も首都トリポリを拠点とする暫定政権と、東部トブルクを拠点とする勢力に分裂している。

 統治機能の欠如で、国内に16基あるダムの多くは長期間使用されず、補修工事に充てる予算はないという。気象サービスも機能していなかった。

 赤新月社によると、内戦の影響で残った地雷や不発弾が、洪水で散らばった恐れがあるという。市民の避難や救助隊の作業に支障を来さないか気がかりだ。

 国連人道問題調整室(OCHA)はリビアで約88万人が洪水被害の影響を受けていると公表した。

 感染症のリスクを減らすため、安全な飲料水や衣食住、医薬品の確保といった支援が必要だ。

 日本政府は両国に支援の用意があると伝えている。数々の被災経験を生かし、救援や復旧、復興で積極的に役割を果たしたい。