両国間の軍事協力が強化されれば、北東アジア地域の安定を損なう恐れがある。ウクライナ侵攻をさらに長期化させる可能性もあり、看過できない。

 北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記がロシアを訪れ、極東アムール州のボストーチヌイ宇宙基地でプーチン大統領と会談した。

 両首脳の会談は2019年4月以来で、金氏にとっては新型コロナウイルスの世界的な感染拡大後、初の外遊となった。

 会談で金氏は対ロ関係を「最重視し発展させていく」と強調。

 プーチン氏は北朝鮮との軍事技術協力に「展望がある」として連携強化に意欲を示した。

 両国が緊密な関係を誇示したのは、対米共同戦線を敷く意図があるからだろう。日米韓が先月開いた首脳会談で安全保障協力を強化したことに対抗する姿勢に映る。

 会談の詳細は明らかではないが、北朝鮮からロシアへの武器・弾薬支援を含む軍事協力が主要議題になったとみられる。

 侵攻の長期化で、ロシアは武器や弾薬などに外国の援助を必要としているものの、友好関係にある中国は欧米との関係に配慮して武器輸出に踏み込んでいない。

 経済規模、軍事力ともロシアより格段に小さく、核兵器開発を巡って国際社会で孤立する北朝鮮を頼らざるを得ないのは、それだけロシアが深刻な兵器不足に陥っていることの表れだろう。

 ロシア軍に弾薬の補充が進めば、戦争を続ける能力が高まることは間違いない。侵攻を長期化させる支援は容認できない。

 韓国軍は13日、北朝鮮が同日のロ朝首脳会談直前に、短距離弾道ミサイルを2発、日本海に向けて発射したと発表した。

 北朝鮮はこのところ、頻繁に弾道ミサイルを発射しているが、軍事偵察衛星の打ち上げには相次いで失敗した。技術を確立できているとは言えず、ロシアの技術協力は切実だ。

 これに対しプーチン氏は、会談会場に宇宙基地を選び、北朝鮮へのミサイル技術供与を示唆した。

 世界最多の核弾頭を保有する核超大国のロシアと、核攻撃能力の向上を進める北朝鮮が結束を強めれば、北東アジアのみならず、世界を広く核の脅威にさらす。

 米国務省は「北朝鮮からロシアへの武器移転は複数の国連安全保障理事会決議に違反する」とし、武器供与が決まれば、両国に追加制裁を科す方針だ。

 北朝鮮が繰り返す弾道ミサイル発射も国連安保理決議に反する。

 しかし安保理常任理事国の一角であるロシアは、安保理による北朝鮮への新たな制裁に同意しない考えを示している。

 両国が孤立を深め、脅威を増幅させることを危惧する。そうならないように、国際社会は緊張緩和の道を探らねばならない。