子どもを性犯罪から守るためのしっかりとした制度を構築せねばならない。法制化へ丁寧な議論を重ねてもらいたい。
子どもと接する職業に就く人に性犯罪歴がないことを確認する制度「日本版DBS」の創設に向け、こども家庭庁の有識者会議が報告書案を示した。
日本版DBSは、2020年にベビーシッター仲介サイトに登録した男2人が強制わいせつ容疑などで逮捕された事件を契機に、導入を求める機運が高まった。
その後も教員や講師らによるわいせつ事件は続発している。子どもに対する性犯罪は再犯率が高い。加害者に子どもと接する仕事をさせないことが、再犯を防ぐことにもつながるだろう。
報告書案によると、対象になる罪は、不同意わいせつ罪など性犯罪の前科で、盗撮と、痴漢行為の一部も含む。
学校や保育所、認定こども園、児童養護施設などに性犯罪歴の確認を義務付ける一方で、公的な監督の仕組みが整っていない学習塾や予備校、放課後児童クラブ、認可外保育施設、スイミングクラブなどは任意がふさわしいとした。
学習塾では性犯罪が頻発しているため、学習塾も義務付けるよう求める声が出ている。
報告書案は、性犯罪歴を任意で確認した事業者に対する国の「認定制」を提唱した。政府は認定した事業者を公表する方針だ。
保護者が安心して子どもを預けられるよう、多くの事業者に認定制を利用してもらいたい。
有識者会議では、逮捕された後に不起訴になった場合は対象にするか賛否が割れたが、報告書案は裁判所で有罪判決が確定した前科を対象とすべきだとした。
職業選択の自由との兼ね合いで就業制限には厳格な根拠が必要なのだろう。
DBSは性犯罪歴の有無というプライバシーに関わるだけに、情報は慎重に扱わねばならない。情報漏えいに罰則を求め、情報の確認を申請するには本人の同意が必要としたのは理解できる。
報告書案を踏まえ、政府は秋に予定される臨時国会に関連法案を提出したい考えで、法案作成の作業を本格化させる。
課題は残る。加害者の更生の点から、性犯罪歴を確認できる期間に上限を設けるとしたが、どれほどの期間とするのか。
都道府県が条例で独自に定めている性犯罪は、内容にばらつきがある。性犯罪の種別の線引きでさらなる検討が求められる。
ジャニーズ事務所の性加害事件を受け、地位を利用した子どもへのわいせつ行為も児童虐待とするよう、児童虐待防止法の改正を求める動きも出ている。
子どもを性犯罪から守るには、あらゆる面で対策を考えていくことが必要だ。
