窓欄を読む楽しみの一つは、投稿者の皆さんから今まで知らなかった音楽を教えてもらえることだ。これはと思った曲は聴いてみることにしている
▼新潟市出身の45歳の女性が先ごろ、中学校の音楽の授業で米国の作曲家、スティーブ・ライヒの「ピアノ・フェイズ」という曲を聴いたと投稿していた。「規則的に反復する旋律が、少しずつズレて、混沌(こんとん)としていく。(中略)あまりに難解で頭が混乱した」という
▼CDを聴いて、納得した。短い楽譜が20分間にわたって、繰り返し演奏されているかのようだった。ほかの名曲のような印象に残るメロディーは、最後まで奏でられなかった
▼投稿した女性に電話で話を聞いた。定年間近の男性教諭は「こういう変な曲もあるんだよ」と言って「ピアノ─」を紹介してくれた。「新潟で一番の音楽教師」を自称し、ジャズを「ズージャ」と呼んだ。「『雪の降る町を』を『雪の古町を』と勘違いするなよ」と真顔で注意したという
▼授業では、遅刻と私語は厳禁。校歌の指導には熱心で、真面目に歌わないと雷を落とされた。今でも同級生が集まると「後にも先にも、あんなに個性的な授業はなかった」と話題に上るという
▼教員を巡っては、残業の多さと志望者減少が大きな問題になっている。長時間労働の是正に向けて、文部科学省の審議会は緊急提言をまとめた。過酷な状況は一日も早く解消しなければならない。何十年たってもなお生徒の心に残る「個性的な授業」が行われるためにも。