感染法上の位置付けでは5類に引き下げられたとはいえ、感染はなお収束せず、第9波の様相を呈している。

 政府は医療支援を10月以降縮小し、来春の廃止を目指すが、受診控えが起きないように、柔軟に対応してもらいたい。

 厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症の10月以降の医療支援策を発表した。9月末までとなっていた医療支援を、規模を縮小した上で継続するとした。

 全額公費負担としてきた高額な抗ウイルス薬は、所得に応じて最大9千円の自己負担を求める。入院費補助は、最大1万円と現行の半額に縮小する。

 病床を用意した医療機関に一律で支給してきた病床確保料は、上限額を8割に縮小し、感染拡大時のみ支給する形に変更する。いずれも来年3月末までの措置だ。

 新型ウイルスワクチンの秋接種はきょう20日に始まる。オミクロン株派生型「XBB・1・5」に対応したワクチンが使われ、来年3月末まで無料で受けられる。

 生後6カ月以上で初回接種を終えた人が対象だ。これまで接種したことがない人も、別の枠組みで、本年度中は無料で打てる。

 気になるのは、来春以降の国の医療支援が見通せないことだ。

 新型ウイルスの位置付けが季節性インフルエンザと同じ5類になったことを受け、厚労省は他の感染症とのバランスを考慮し、来春の支援廃止を目指す。

 厚労省によると、医療支援の主な原資となる「緊急包括支援交付金」は、新型ウイルスの流行が始まった2020年度以降、累計で約9兆円が予算計上されている。

 今回の支援見直しでも、公費負担を減らしたい財務省がさらなる縮小を求め、政府内には「新型ウイルスの特別扱いをやめるべきだ」との意見もあったという。

 急な支援打ち切りによる医療現場の混乱を懸念した厚労省は軟着陸を図ったが、患者の負担増は受診控えにつながりかねない。

 感染者数は秋ごろにいったん減少した後、年末年始に向けて流行の波が来る傾向だった。しかし今年は、9月に入っても高止まりし、注意を要する。

 医療現場に負荷がかかる状況が続き、感染拡大時に医療逼迫(ひっぱく)を起こすことがあっては困る。

 厚労省は、ワクチン接種についても、自己負担が生じる可能性のある「定期接種」への切り替えを検討している。

 これに関しては、全国市長会が自己負担軽減を要望した。国費で一部を賄い、インフルエンザ並みの負担に抑えるよう訴えている。

 国は希望者が引き続き安心して接種できる体制を整えてほしい。

 5類移行後も高齢者らにとっては重症化のリスクを伴うことを念頭に、政府は国民の健康を守る対策を講じるべきだ。