

大阪や広島の人たちのソウルフードお好み焼き。大阪に住んでいた若い頃、近所や繁華街の人気店に通うのが楽しみだった。
どこにも名物店主がいて、店によって味はもちろん、雰囲気が異なるのも面白かった。小さな店では店主のおばちゃんとの会話もご馳走(ちそう)のひとつ。1人暮らしの寂しさを埋めてくれる人情味あふれる温かな対応が心に染みた。
一般的に「大阪風お好み焼き」とは、小麦粉を水で溶いた生地に、卵、千切りにしたキャベツ、もやし、肉や魚介類、麺類などを混ぜ込んでから鉄板で焼く「混ぜ焼き」。一方の「広島風お好み焼き」は、生地を鉄板に薄く伸ばし、千切りのキャベツ、もやし、肉や魚介類、麺類、卵などの具材を重ねていき鉄板で焼き上げる「のせ焼き」が特徴だ。

新潟県でも以前はさまざまなお好み焼き店があったが、チェーン店を除き、個人経営の店はめっきりと少なくなった。そのせいか、今では私もお好み焼きは家で作って食べるのが基本。自分で作るのが一番おいしい、と思っている。いや、今回の取材をするまでは思っていた、というのが正直なところだ。
広島風お好み焼きは、祭りの屋台でしか食べたことがなかったが、専門店では分厚い鉄板上で焼き上げるため、家庭用の鉄板プレートとは圧倒的に伝熱効果が異なる。おいしさが倍増するのは言うまでもない。

長年にわたって店を守り続け、愛されてきた店が長岡市にある。大阪出身の名物おかんが夫婦で営む大阪風お好み焼きの「花月」と、広島出身でプロ野球のカープファンの店主が夫婦で広島風お好み焼きを提供する「中しま」だ。いずれもお好み焼きの本場出身だからこそ出せる味。
現地の人をもうならせる2軒の店を訪ね、その違いとおいしさの秘密を探った。...
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