女性活躍の推進を掲げる政権としては、あり得ぬ人事と言わざるを得ない。政治のジェンダー格差を是正する覚悟が見えない。

 先週発足した第2次岸田再改造内閣の副大臣・政務官人事で、副大臣26人と政務官28人の中に女性が一人も登用されなかった。

 自民党が政権復帰した2012年の第2次安倍内閣以降、女性ゼロは初めてだ。

 再改造内閣で岸田文雄首相は、過去最多に並ぶ5人の女性閣僚を起用した。日本は女性登用が遅れており、特に政治分野は深刻だ。女性閣僚起用にはそうした批判をかわす意図もあるだろう。

 しかし、将来の閣僚を養成する重要なポストである副大臣・政務官を全員男性が占めたのでは、バランスを欠いている。

 副大臣・政務官人事は、首相の意向が強く働く閣僚人事とは異なり、自民各派閥や公明党の推薦を基に、派閥バランスを考慮して官房長官らが構成する。

 副大臣は衆院議員で当選3~4回の中堅、政務官は当選1~2回の若手が推されることが多く、衆参両院の自民女性議員は大半が副大臣や政務官を経験している。

 一方、男性議員には未経験者が残り、派閥の意向を反映した結果が男性のみの人事となった。

 とはいえ、首相をはじめ政権内に、女性不在の人事をおかしいと思う人はいなかったのか。この人事がすんなり決まるのでは、ジェンダー平等への感覚を疑う。

 副大臣・政務官に女性がいないことの根本的な原因は、自民議員に女性が少ないことにある。

 自民出身の議長を含めた衆参両院379人のうち女性は45人で、12%に満たない。この状況が続けば、今後も同じ事態を招く。

 自民の党改革実行本部は6月、女性議員の育成と登用に関する基本計画を策定し、党所属女性国会議員を今後10年間で30%に引き上げる方針を打ち出した。

 看板を掲げるだけでなく、本腰を入れて女性議員を増やし、育成してもらいたい。国会、地方議会で多数を占める自民が率先して女性議員を増やさなければ、女性活躍の実現は遠い。

 内閣改造を巡っては、岸田首相の発言にも違和感が指摘されている。女性閣僚の起用について首相は「女性ならではの感性や共感力を生かしてほしい」と述べた。

 能力ではなく、性別で登用したと受け取られかねない。女性という性別に対する固定観念や、無意識の思い込みもうかがわせる。

 首相は「政策決定における多様性の確保が重要であることや、個性と能力を十分に発揮して職務に取り組んでもらいたいという趣旨を述べた」と釈明した。

 性別や国籍などの属性で一方的に断定する発言は差別につながる。首相はそのことを自覚し、適切な発言を心がけてもらいたい。