海外に行って改めて日本の良さに気づくことがある。以前、訪れた国では買い物にストレスを感じた。1ダース入りの卵を買うと、1個か2個割れている、ということがしばしばあったのだ

▼紙箱入り商品の箱が破れているなどということも当たり前だった。気になるならしっかりと選ぶしかない。買い物のたびにパッケージの隅々まで確認しなくてはいけないのは面倒だった。日本ならここまで気にしなくてすむのに、と何度も思った

▼生産者から消費者の手元に届くまで、日本の流通事業者と小売店がいかに丁寧に商品を取り扱っているかを実感した。傷一つない商品が店頭に並び、頼んだ荷物がすぐ届く暮らしは日本では普通のことだろう

▼その便利な生活を支えてきた物流業界が大きな転機を迎えようとしている。2024年からトラック運転手の時間外労働の上限が規制される。長時間の拘束が常態化していた運転手の労働環境改善を目指す動きだ

▼深夜の長距離運転など、過酷な条件で働いているトラック運転手の環境改善は歓迎したい。一方で、それに伴う人手不足は深刻になる見通しだ。30年になると輸送能力が30%不足する可能性があるという。今までのような便利な物流が維持できなくなるかもしれない

▼対策に向けた動きもあるが、抜本策は見えない。消費者には何ができるだろうか。宅配便の再配達をなくすことや、小分けにせずまとめて注文することなどだろう。商品の向こうには作り手だけでなく、運び手もいる。

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