県職員が官製談合の疑いで逮捕されたのは初めてだ。部長級の現職が関与した衝撃は大きく、あぜんとする。県警は捜査を徹底し、真相を解明してもらいたい。

 官製談合事件が繰り返されないように県は入札制度を検証し、問題点を洗い出すべきだ。

 県警は官製談合防止法違反などの疑いで、県新発田地域振興局の農村整備部長を逮捕した。公競売入札妨害の疑いで、新発田市の建設業「岩村組」の顧問と元常務取締役の2人を逮捕した。3容疑者の認否は明らかにしていない。

 農村整備部長の逮捕容疑は、振興局発注の農地区画整理工事の通常型指名競争入札を巡って6月上旬ごろ、非公開の予定価格や入札参加業者を顧問に教え、同22日の入札で岩村組に落札させた。

 顧問と元常務には、部長から聞いた価格に基づき算出した価格で応札し、1億200万円で落札した疑いがある。

 県警は3容疑者を送検した。それぞれの関係性や予定価格を教えた手段、金品授受など見返りの有無、談合の動機について調べを尽くさねばならない。

 対象工事は農地を区画整形して用・排水路を整備するもので、予定価格1億873万円、最低制限価格1億4万円だった。岩村組を含む15社が入札に参加した。

 93・8%という今回の落札率は類似工事の入札結果と比べて突出した数字なのか、過去の入札記録に注目したい。

 逮捕された部長は農業土木の技術職で、3度目の新発田振興局勤務だった。建設業者からは「新発田の業者で知らない人はいない」との声が出ている。

 同じ部署での勤務が長ければ、業者との癒着を招きかねない。人事異動のあり方に問題はないか、県に検証を求めたい。

 一方、岩村組の2人は営業担当で、顧問は下越地方の首長を長年務めた実力者の長男として知られている。「昔から新発田地域周辺の業界を仕切っていた」と話す建設業者もいる。

 他の入札業者への働きかけや、業界での受注調整はなかったか。県警は公共工事を巡る談合構造にメスを入れ、不正があるなら全容を明るみにしなくてはならない。

 県内の主な官製談合では、公正取引委員会が2004年、新潟市の公共工事を巡って全国2例目の官製談合防止法を適用した。

 19年には長岡市の下水道工事で市幹部や県議秘書らが、21年には糸魚川市の駅公衆トイレ整備工事で市職員と業者が逮捕された。

 県は3年前、入札最低制限価格の下限を「予定価格の91%」から「75%」に見直したが、建設コスト削減策の一環としてで、不正防止の観点は手つかずだった。

 官が関わって公正な競争をゆがめてはならない。行政職員には自ら律する自覚が求められる。