侵攻から1年半以上が過ぎ、各国には支援疲れもにじむ。しかし、他国の領土を武力で踏みにじる行為は許されるものではない。

 国際社会は協力し、支援と和平への道を粘り強く探る必要性を、改めて認識してもらいたい。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は、国連総会一般討論で演説し「侵略者を倒すため団結しなければならない」と述べ、世界の首脳らに支援を訴えた。

 ゼレンスキー氏が侵攻後初めて国連本部に赴いた理由には、対面で支援を直訴することや、グローバルサウスと呼ばれる新興・途上国を、対ロシア包囲網に導きたい思いがあるとみられる。

 ゼレンスキー氏は侵攻の影響は世界規模で波及し「ロシアは食料不足を武器化し、アフリカから東南アジアまで影響が広がっている」と批判した。他国もロシアの侵略行為の標的になる可能性があると述べ共感を得ようと試みた。

 しかし、中立を維持しようとする国は多く、議場は空席が目立ち反応は冷ややかだった。

 グローバルサウス側には、欧米がウクライナを特別扱いし、他地域の紛争や国際的課題を軽視してきたとの反感が強いのだろう。

 最大支援国の米バイデン大統領は、「ウクライナの分割を許して他の国の独立が守られるのか」と演説した。ゼレンスキー氏との会談に合わせて最大3億2500万ドル(約480億円)の追加軍事支援も発表した。

 だが、米国内も世論が割れている。CNNテレビの7月の調査で「もっと支援すべきだ」との回答は48%で、侵攻直後の62%と比べ関心の低下は鮮明だ。

 野党共和党の保守強硬派は、インフレ沈静化などに予算を回すべきだと批判を強めている。

 心配なのは、強力な支援国である隣国ポーランドとの間であつれきが生じたことだ。

 ポーランドは自国の農業が打撃を受けると警戒し、ウクライナ産穀物を輸入規制している。

 これをゼレンスキー氏が国連演説で暗に批判したことに、ポーランドのモラウィエツキ首相が反発し「ウクライナへの武器供与をやめる」と述べた。

 ポーランドのドゥダ大統領が首相発言を修正し、事態の収拾を図ったが、関係悪化は欧米の対ロ結束に乱れが生じかねない。

 ゼレンスキー氏は、安全保障理事会にも出席し、ロシアの拒否権を剝奪すべきだと訴えた。

 「侵略者が拒否権を握っていることが、国連を行き詰まりに追い込んでいる」と指摘し、常任理事国には日本やドイツ、インドが含まれるべきだとの考えを示した。

 ロシア側は反論したものの、拒否権行使を多用し、国連を機能不全に陥らせていることは明白だ。

 国際社会は国連を軸に協調できるよう知恵を絞らねばならない。