都会の反対側にある言葉は何だろう。田舎だろうか。田園でもいいかもしれない。せせこましい都会とは違う、広がりのある景色が目に浮かぶ。田んぼ畑がどこまでも連なる景色は気持ちがいい。無数の実りがそこにある。そう考えると、敬うべき景色である

▼先ごろ政治の場から、その響きが聞こえてきた。農業政策でなく、環境問題でもなかった。岸田文雄首相が会見で口にした。社会を改革していくために「デジタル田園都市」構想を進めるのだと語った

▼似たような田園型政令市という響きは平成の大合併のころよく聞いた。あれは、広い水田地帯と市街地が一緒になってできる新・新潟市を思い描く上では意味があった。それに比べてデジタルが付いた田園都市はどうか。想像するのは難しい

▼一昨年も岸田首相は演説で触れていた。さかのぼれば自民党の政調会長時代から構想を掲げてきた。東京一極集中を是正するために必要なのだという。地方の活性化につながるのだと説明する

▼デジタルの力を信じたい気もする。県内に働き口を生み、にぎわいを生む光明となるのなら歓迎したい。最新のどんな技術がどう地方を変えるのだろう。残念ながら首相がそこまで踏み込んで語ることはない。そろそろデジタルの力を感じたいのだが

▼「地方創生」が言われて10年近くになるが、いまだに実りを知らない。令和の田園都市構想もスピード感がない。地方に冷たい政治だろうか。このままでは田園ほどの実りは期待できそうにない。

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