新潟市中央区の信濃川べり、曲線と直線を組み合わせたユニークな外観が目を引く。1960年に完成した市体育館である。当初からスポーツだけでなく、各種イベントにも活用できるよう設計された

▼冬でも利用しやすいよう暖房効率を高める必要があった。従来の体育館でよく採用された三角形やアーチ形の屋根は上部に無駄なスペースができる。平屋根は上からの力に弱いので積雪地域には不向き。そこで採用されたのが、馬のくらを思わせる独特の形状だった

▼今見てもデザインは古びていないが、建物に近寄ると外壁などはさすがに年月を感じさせる。この体育館や隣接する市陸上競技場など、64年の1巡目・新潟国体に合わせて整備されたスポーツ施設は築60年前後で、老朽化が著しい

▼こうした建物の将来像はどうあるべきか。検討が進む。多目的に使える室内競技場や、サッカーなど球技専用スタジアムをはじめ、さまざまなアイデアが挙がっているらしい。忘れたくないのは一連の施設がまちづくりの核になり得る点である。人の流れを呼び込む、貴重な存在になる潜在能力があるはずだ

▼各地でスポーツ施設を中心に飲食店やショッピング施設を配置する取り組みが進む。プロ野球日本ハムの拠点「エスコンフィールド北海道」のケースはよく知られる。長崎市ではサッカー競技場を中心とした「スタジアムシティ」の整備が進む

▼人々のにぎわいの拠点に-。あの体育館の屋根デザインに込められた思いを受け継ぎたい。

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