新内閣が発足してまだ2週間だというのに、あきれる事態だ。「政治とカネ」を巡る問題で透明性を確保するために、政権は積極的な対策を講じるべきだ。
第2次岸田再改造内閣の閣僚や自民党役員が代表を務める政党支部などの政治資金収支報告書で、寄付や事務所費の支払いに関する問題が明らかになった。
高市早苗経済安全保障担当相と西村康稔経済産業相、萩生田光一政調会長、小渕優子選対委員長がそれぞれ代表を務める政党支部が、2021年の衆院選直前に国の事業を請け負う業者から寄付を受けていたことが分かった。
公選法は国政選挙に関し、国と契約を結ぶ当事者による寄付を禁止している。
4氏は一様に、寄付当時に請負契約があることを知らなかったと釈明した。誤解を招く恐れがあるとして、道義的観点から返金または返金するとした。
いずれも政権の中核をなす政治家である。選挙直前の寄付であればなおさら、請負契約の有無を確認するのが当然だ。
問題の発覚後、通り一遍の釈明や謝罪で済ませる対応が目立つことも国民を侮っている。
政治団体の活動を国民の不断の監視と批判の下に置くという政治資金規正法の趣旨を忘れず、緊張感のある対応を求めたい。
松村祥史国家公安委員長と加藤鮎子こども政策担当相らが、親や親族が代表を務める会社に対して事務所の賃料を支出したと記載していたことも明らかになった。
適正な賃料だと主張しているが、親族への支払いは政治資金の「還流」を疑われることを知らないはずはないだろう。
昨年秋には、当時の寺田稔総務相と秋葉賢也復興相が、身内に事務所の賃料を支払っていたことが分かった。その後、政治資金処理などを巡る別の問題が噴出し、両氏は辞任した。
今回は事務所費問題とは別に、松村氏が代表を務める選挙区支部が、指名停止を受けた業者の献金を受けたことが判明している。
加藤氏は代表を務める資金管理団体の報告書にパーティー券を巡る違法な資金受領があり、寄付の間違いだったとして訂正した。
政治とカネの問題を発端に、閣僚4人が相次いで交代した昨年の「辞任ドミノ」を想起する。
岸田文雄首相はこの時、問題がある閣僚らに「説明を尽くしてほしい」として静観したが、かばいきれない状況に陥った。
しかしその後も、岸田首相が政治とカネを巡る問題の対処に積極的に動いた形跡はない。
東京地検特捜部は27日、受託収賄罪などで、自民を離党した衆院議員秋本真利容疑者を起訴した。
政治とカネの問題が後を絶たないのは、岸田首相の及び腰な姿勢と無関係ではないはずだ。
