度重なる上振れで建設費は当初の倍近くに膨らむ見通しとなった。開幕に間に合うか懸念される中、さらなる上振れは避けるべきだ。規模や中身の精査が必要だ。
2025年大阪・関西万博を運営する日本国際博覧会協会が、会場建設費に関し、現在より450億円上振れし、2300億円程度になる見通しを示した。
建設費は、開催が決まった18年は1250億円の見積もりだったが、20年には暑さ対策などで1850億円に膨らんでいた。今回が2回目の上振れとなる。
資材価格の高騰や、現場の人手不足による人件費上昇など外部環境の変化でコストがかさんだ。
政府は、上振れ分は国と大阪府・市、経済界で3分の1ずつを負担する枠組みに沿って対応を協議するとした。国が負担する増加分の一部を23年度補正予算案に盛り込む方針だ。費用は今後さらに変動する可能性もあるという。
原資となるのは国民の税金だ。負担を求めるのであれば、しっかりと説明しなくてはならない。
海外パビリオンの建設が遅れていることも気がかりだ。
万博には150超の国・地域が出展を予定し、うち50以上の国・地域が独創的デザインの施設を自前で建てる「タイプA」を望む。「万博の華」と期待されている。
ただ建設業者との契約交渉が難航し、許可申請の前段階に当たる基本計画書を提出したのは、これまでにチェコやモナコなど10未満の国・地域にとどまっている。
博覧会協会は、デザインを簡素化し、建設を代行する「タイプX」への移行を各国に提案し、早期着工を目指している。
約10の国・地域が関心を示しているというが、不十分だろう。協会は丁寧に工期の実情を各国に説明し、理解を得る必要がある。
一方で、遅れをばん回しようと、働き方改革に逆行する言動があったことは残念だ。
協会が、万博関連の工事に従事する建設労働者については、24年4月に導入予定の残業規制の対象外とするよう政府に要望していたことが、明らかになった。
批判が相次ぎ、政府が「単なる業務の繁忙では認められない」との見解を示したのは当然だ。労働者の安全を軽視してはならない。
主に入場料収入で賄う運営費も、警備強化などを理由に、当初想定の809億円から最大で500億円程度上振れする可能性が指摘されている。
岸田文雄首相は、万博の対応を協議する会合で「準備は極めて厳しい状況に置かれている。成功に向けて政府の先頭に立って取り組む決意だ」と述べた。
今回の万博は、まだ全国的な機運が高まっているとは言い難い。
政府は、開催地の自治体と連携し、国民の理解を得られるよう努めるべきだ。
