授業中に通りかかったちんどん屋さんを呼び込み演奏させる、窓辺に立って巣を作るツバメに大声で話しかける-。俳優の黒柳徹子さんが小学生だった頃の様子という。担任から入学わずか数カ月で退学を求められた
▼転校先のトモエ学園はユニークな学校だった。その日勉強する科目の順番は児童が自分で決める。障害のある子もない子も一緒に学んで、遊ぶ。自由な校風と、校長先生がかけてくれる言葉が黒柳さんを支えた。「君は、ほんとうは、いい子なんだよ」
▼黒柳さんは後年、幼少期の思い出を小説「窓ぎわのトットちゃん」に記した。本はベストセラーになった。同時にトットちゃんは発達障害の一種である学習障害(LD)だったのではないかとの声も寄せられた
▼黒柳さん自身「LDかもしれない」とする。就職した頃は「変な子」と言われ続け、計算は2桁になるとだめ。それでも校長先生の言葉があったから「私は私でいい」と乗り越えてこられたとエッセーに書いている
▼発達障害のある小中学生は一般に、クラスに3人ほどの割合と推計される。他人の気持ちを読み取るのが難しかったり、得手不得手の差が極端だったりと特徴は多様だ。だが、周囲の理解と工夫で持っている力を生かせるといわれる
▼かつて「変な子」と言われた黒柳さんは90歳の今も番組の司会をし、ユニセフの親善大使を務める。歩みを支えた「いい子なんだよ」という言葉の重みを思う。あす刊行される「トットちゃん」の続編も楽しみだ。