またも偉業を成し遂げた。球史に残る快挙を心からたたえたい。

 レギュラーシーズンを終えた米大リーグで、エンゼルスの大谷翔平選手が44本塁打でアメリカン・リーグの1位となり、日本選手初の本塁打王を獲得した。打撃部門の主要タイトルは日米通じて初めてだ。

 本塁打王獲得を受け、「大リーグでこれまで活躍された日本人選手たちのことを考えると大変恐縮であり光栄なこと」との談話を発表した。謙虚で周囲への感謝を忘れない大谷選手らしい。

 今年は春から連日のように度肝を抜く活躍を見せた。6月に球団と日本選手の月間記録となる15本塁打を放ち、7月と2カ月連続でア・リーグの月間最優秀選手(MVP)に輝いた。

 投打「二刀流」で、7月のダブルヘッダー第1試合で完封勝利を挙げ、第2試合では2打席連続で本塁打を放った。

 2021年は2本差で本塁打王を逃していた。だが大谷選手は今季はバットを長くし、数少ない弱点の外角高めを克服した。実戦を疑似体験できる最先端の打撃マシンで打棒に磨きをかけた。

 肉体も屈強にした。今季の本塁打の平均飛距離は約129メートルと大リーグトップ級で、技巧派の印象が強い日本人打者像を覆した。

 人一倍の探求心と鍛錬を重ねる姿勢には驚嘆するほかない。

 ベーブ・ルース以来の「2桁勝利、2桁本塁打」も、昨年に続き2年連続で達成した。

 打率は大リーグでは自身初めてとなる3割を超えた。盗塁数は20をマークした。

 しかし後半戦の途中で離脱したことは残念だった。8月に右肘靱帯(じんたい)の損傷が見つかり、9月には右脇腹を痛めた。18年に続き2度目の右肘手術を受けた。

 大谷選手は、横に大きく曲がる「スイーパー」を多投し、直球の平均球速は約156キロだ。昨季途中から登板間隔を縮めていた。

 専門家は「あれだけの球速と高速の変化球で肘に負担がかかり、疲労の蓄積が回復しないまま投げていたのだろう」と分析する。

 来季は打者に専念し、25年に投打での復帰を目指す。じっくりと体をケアしてもらいたい。

 3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)でも日本代表を優勝に導いた。

 常にひたむきな姿勢で、挑戦を続ける大谷選手に勇気づけられる人は多いはずだ。二刀流の復活を待ちたい。