米議会の混迷は深まるばかりだ。米国内にとどまらず、ウクライナをはじめ世界に及ぼす影響が懸念される。
米下院本会議は3日、共和党の保守強硬派議員が提出した同党のマッカーシー議長に対する解任動議を賛成多数で可決した。下院議長の解任は史上初となる。
解任動議提出の背景には、マッカーシー氏が主導して9月末に成立した政府つなぎ予算がある。
強硬派が要求した歳出の大幅削減が盛り込まれず、マッカーシー氏が民主党と協力したことに強硬派が反発したとみられる。
バイデン政権との合意内容を一方的に変えようとしたこともあり、民主党の信頼も失った。
マッカーシー氏は1月の議長選でも強硬派の支持を得られずに投票が10回以上繰り返され、円滑な議会運営が危ぶまれていた。解任動議には、民主党全員が賛成し、共和党の8人が同調した。党内基盤の弱さが響いたと言える。
次期議長には、マッカーシー氏よりも保守的とされる人物が取り沙汰されている。そうなれば民主党との対立がより先鋭化するのは確実だろう。
つなぎ予算で支出を賄うのは11月中旬までで、失効までに2024会計年度(23年10月~24年9月)の予算が成立しなければ、政府機関が一部閉鎖し低所得者への食料支援が滞るなどの恐れもあるが、先行きは見通せない。
バイデン大統領の報道官は、バイデン氏が早期の議長選出を望んでいるとの声明を発表し、「米国が直面する喫緊の課題は待ってはくれない」と強調した。
かつてない事態に危機感を抱くことは当然だ。
つなぎ予算はウクライナ支援も除外された。影響が心配される。
米国はロシアのウクライナ侵攻以降、軍事支援だけでウクライナに439億ドル(約6兆5千億円)以上を拠出した。
支援の重要性は超党派で認識され、上院は数週間以内にも超党派での採決を目指すが、共和党内では多額の財政負担に抵抗感が拡大している。
特に下院では、「米国第一」を掲げるトランプ前大統領と近い強硬派が、議長解任動議を可決させて勢いを増しており、今後の審議は不透明感が漂っている。
反転攻勢を続けるウクライナ軍にとって、最大の軍事支援国である米国が揺らげば、各国の支援にもほころびが生じかねない。
バイデン政権や民主党議員は、支援が途切れれば、ロシアのプーチン大統領を利するだけだと主張している。
このまま予算が確保されない場合、支援は2カ月程度しか続かないと指摘されている。
米議会の動向は、世界が注目している。内輪もめしている場合ではないはずだ。
