プロ棋士になりわずか7年、21歳の若さで前人未到の金字塔を打ち立てた。八冠全てを制覇した偉業をたたえたい。さらなる高みを目指し、どこまで進化を続けるのか楽しみだ。
将棋の藤井聡太七冠(竜王・名人・王位・叡王・棋王・王将・棋聖)が、第71期王座戦5番勝負第4局で永瀬拓矢王座を破り、3勝1敗で王座を奪取し、八大タイトル全てを獲得した。
タイトルが複数になってから全てを独占したのは4人目だが、2017年に八大タイトル戦になってから全冠制覇したのは初めてだ。1996年に羽生善治九段が樹立した七冠を上回った。
今後は藤井八冠がいつまでタイトル独占を維持できるかが注目される。羽生九段は七冠独占から5カ月半後に棋聖を失っている。
藤井八冠は最年少の14歳2カ月でプロ入りした。17歳11カ月でのタイトル初獲得など次々と最年少記録を塗り替えた。初タイトルからは失冠せず八冠を独占した。
強くなることだけを目標に、日々の努力を怠らず、人工知能(AI)を取り入れた研究で弱点だった序盤、中盤を格段に向上させた。公式戦の通算勝率は、8割を超えている。まさに「独り勝ち」の状況と言える。
王座を奪取した対局では中盤永瀬前王座にペースを握られ、終盤は1分未満で指す必要がある「1分将棋」に陥ったが限られた時間で正確に指し切った。
八冠達成後には「引き続き実力をつけたい」「まだまだ頂上は見えない」と話した。謙虚な姿勢で今後も研さんに励み、ファンを驚かす一手を指すに違いない。
将棋界は「藤井人気」で活況を呈している。ファンの裾野は女性や若年層にも広がった。インターネットの配信番組などで、指さなくても観戦を楽しむファン「観(み)る将」が続出している。
一方、藤井八冠のあまりの強さに、将棋熱が冷めていくのではないかと不安視する声も出始めている。そうならないためには、ライバルの出現が求められる。
永瀬前王座をはじめ、名人や棋王などのタイトルを奪われた渡辺明九段らが「打倒藤井」に闘志を燃やすことだろう。
藤井八冠より若い人たちはAIを使った研究で育っている。年齢が下の世代から強敵が現れることも期待したい。
将棋界全体がレベルアップしハイレベルな戦いで、これからもファンを沸かせてほしい。
