猛暑の影響で県産米の等級が落ち、主力のコシヒカリは1等米比率が過去最悪になることも懸念される。農家の経営悪化を食い止める施策を講じるとともに、暑さに強い品種の開発も急ぎたい。

 県によると、2023年産うるち米の1等米比率は9月末時点で15%だ。平年は80%程度とされ、23年産の等級低下が際立つ。

 とりわけ深刻なのは、作付面積で県全体の64%を占めるコシヒカリだ。1等米比率は3%で、過去最低だった10年産の20・3%を下回る可能性がある。異常な事態と言わざるを得ない。

 作況指数でも本県は9月25日時点で95となり、全国最低だった。

 1等米は形や色の整った「整粒」が70%以上などだと判定される。高温障害で粒が白く濁ったり、亀裂が入る「胴割れ」が生じたりすると、等級が下がる。

 等級が落ちれば、コメの買い取り価格が安くなり、農家の手取りが減ることになる。

 JA仮渡し金を基にした県の試算では、農家の収入が県全体で約977億円になり、平年より約84億円(約8%)減ることが分かった。コシの3等米などに追加払いを決めたことで減少幅が縮まったが、厳しい状況が見てとれる。

 燃料や肥料などの資材の高騰に苦しむ農家の経営が一層圧迫されるといえよう。

 政府には、減収の可能性がある農家向けに、生産意欲を失わせないようセーフティーネットをきちんと整えてもらいたい。

 既存の減収補塡(ほてん)策の「ナラシ対策」は、等級低下を理由とする減収の穴埋めは難しいという。等級低下にも対応できるよう、制度の弾力的運用も検討してほしい。

 一方、暑さに強いとされる新之助の1等米比率は97%で平年並みの高水準だった。ただ、作付面積は県全体の3%未満にとどまる。

 リスクを低減するため、作付けする品種の分散や割合を見直すことも大事な視点だ。

 温暖化が進む中、近年は山形県の「つや姫」や秋田県の「サキホコレ」といった暑さに強く味の良いブランド米開発に全国の自治体などが力を入れている。

 本県は暑さ対策として、主力品種であるコシヒカリBLの品種改良を本格化させた。完成時期のめどは立っていないが、27年度までに新品種の候補群創出を終え、早期の現場投入を目指すとする。

 新潟大は独自に暑さに強い新品種「新大コシヒカリ」の開発を進めている。

 暑さに弱い既存のコシに代われるよう、品種改良米などが早期に現場投入されることを期待したい。全国トップクラスのコメ供給県としての責務でもあるはずだ。

 消費者に向けては、等級が低下しても食味には影響がないことを、今後も官民で連携し、積極的に発信していかねばならない。