説明が尽くされたとはとても言えず、疑惑は残ったままだ。国民の疑問に丁寧に答えるべきで、これで幕引きは許されない。

 細田博之衆院議長が議長公邸で記者会見し、体調不良のため議長を辞任すると表明した。

 公の場での説明を求められていた世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係や、女性記者らへのセクハラ疑惑も追及されたが、「無関係」や「うわさ話」とかわすことに終始した。

 教団との関係について、細田氏はこれまで、教団側の会合に計8回出席し、あいさつしたことなどを文書で説明しただけだった。

 ようやく開いた会見で「会合に呼ばれれば出る程度で、特別な関係はない」と述べたが、教団側の関与が指摘される議員連盟の名誉会長や団体の顧問を務めていたことなどへの説明はなかった。

 自民党の最大派閥、清和政策研究会(現安倍派)の会長だった2016年の参院選で、教団票の差配に関わったとされる疑惑については「参院選の問題は一切関わっていない。自民党と教団との関係も問題はない」とした。

 あまりにも説得力に欠け、政治と教団の関係に国民が抱く不信感を理解していない回答だ。

 昨年、教団との関わりを調査した際に、議長は党派を離脱しているとして対象とせず、細田氏をかばってきた自民の責任も重い。

 14、15日に実施した共同通信の世論調査で、自民が教団との関係を「断てていない」との回答は「あまり」を含め6割を超えた。

 国民からは依然厳しい目が向けられていることを、細田氏と自民はしっかり認識するべきだ。

 セクハラ疑惑に関しては、細田氏は「誰一人セクハラされたと主張していない。単なるうわさ話だ」と否定した。

 しかしセクハラは被害者が不利益を受ける可能性があり、申告しづらい面もある。名乗り出る人がいなければセクハラでないという考え方は、問題の本質を全く理解していないと言わざるを得ない。

 会見のあり方も誠実さを欠いた。フリージャーナリストらの参加は認められず、時間も制限された。質問できたのは、参加した28人のうち記者クラブ幹事社を含めた9社だけだった。

 質問を求める記者の発言が続く中「十分誠意を示した。健康の問題がある」と一方的に退席した。再度記者会見を開く考えはないとも語った。不誠実な姿勢は、三権の長の権威と信頼を大きくおとしめたと言える。

 細田氏は議長辞任後も議員活動を続け、次期衆院選出馬にも意欲を示している。これには与党内ですら「矛盾している」と疑問視する声が相次ぐ。

 議長を退いても議員でいる以上、国民への説明責任があることを細田氏は忘れてはならない。