多くの命が失われた現実に憤りを覚える。人道危機を回避し、被害の拡大に歯止めをかけるには、停戦以外に手段はない。
パレスチナ自治区ガザの病院で17日夜、爆発があった。ガザ保健当局は18日、471人が死亡したと発表した。
ガザを実効支配するイスラム組織ハマスは、爆発はイスラエル軍の空爆によると主張している。
イスラエル軍報道官は空爆を否定し、ハマスとは別の過激派による誤射と強調した。
情報は錯綜(さくそう)しているが、病院への攻撃だとすれば国際法に反する。世界中の国々や国際機関が一斉に非難したのは当然だ。
イスラエル軍はガザへの地上攻撃を視野に、ガザ北部の住民に南部への避難を通告していた。
病院は北部エリアに含まれるが、周囲の安全状況などから避難することが不可能で、患者らのほか、自宅を追われた住民が数千人避難していたという。
戦闘行為が続く限り、惨劇が繰り返される懸念がある。犠牲者を増やさないために、イスラエル軍とハマスには停戦を求めたい。
大規模な戦闘が始まってから、ガザのパレスチナ人が深刻な状況下にあることが気がかりだ。
地区住民の半数を超える約110万人が避難を強いられたことで、南部の滞在者は戦闘開始前の約10倍に膨らんでいる。
イスラエルがガザの完全封鎖を宣言して電気や食料、燃料などの供給を遮断したため、物資が極度に不足している。
ガザ南部のエジプト境界にある検問所では、支援物資を積んだトラックがエジプト側で待機しているものの、イスラエルが認めないため、物資を搬入できない。
イスラエルは南部の検問所周辺なども空爆した。子どもや女性らが多数死亡した。
避難先に支援物資を搬入させず、攻撃まで加えるのは行き過ぎだ。民間人を巻き込み、人道危機を深める行為は慎むべきだ。
事態打開には国際社会の働きかけが不可欠だが、イスラエルとパレスチナを巡る問題は、国によって立ち位置が異なる。
国連安全保障理事会は16日、イスラエル軍とハマスに停戦を要請するロシア提出の決議案を否決した。ハマスを名指しせずにテロ行為を非難しているとして、イスラエルを支持する立場の米国などが反対した。日本も反対した。
歩調を合わせる難しさを露呈したが、各国は分断を深めずに、次の策を探ってもらいたい。
バイデン米大統領は18日、イスラエルのネタニヤフ首相と直接会談したものの、人道支援の道筋を示すことができたとは言い難い。
一刻も早く、深刻な事態から脱し、罪のない人々を守る必要がある。そのために国際社会は連携を強めなくてはならない。
