重症化の波は感染拡大の動きより遅れてやってくる。これまでの経験を踏まえれば、感染者数が高止まりした現状では、警戒を緩めるにはまだ早い。

 新型コロナウイルスの流行「第6波」を受けたまん延防止等重点措置が1月21日に本県で初適用されて1カ月が過ぎた。

 県内では当初シミュレーションで示されたような爆発的な感染急増は抑えられているが、感染者が明確に減ったとは言えず、収束は見通せない。

 県の週間集計によると直近週(2月13~19日)の新規感染者数は3405人。適用直後の週(1月23~29日)の3493人から大きな変化はない。

 県内では中等症や重症の患者が大幅に増え、いずれもこの1カ月で4倍になった。病床使用率は25%(2月17日時点)で医療逼迫(ひっぱく)には至っていないが、高止まりが続けば医療現場に過大な負荷がかかる恐れがある。

 第6波はワクチン未接種の若年層を中心に感染が広がり、高齢者にも拡大した。

 そうした中、全国では22日に死者が初めて300人を超えるなど、過去最多を更新する日が続いている。

 オミクロン株は重症化しにくいとはいえ、感染者数が増えればそれに伴って重症者や死者は増える。一刻も早く感染拡大を食い止める必要がある。

 気掛かりなのは、早期収束の切り札と位置付けられる3回目のワクチン接種のペースが上がっていないことだ。

 3回目接種を終えた18歳以上は16日時点で全国で14・0%。本県ではさらに低く、10・7%にとどまっている。

 本県では医療機関に希望者が殺到するのを防ぐため、自治体が接種日をあらかじめ指定するケースが増え、スケジュールの前倒しがしにくくなっていることが背景にあるという。

 高齢者施設での接種を巡っても接種体制の準備などに時間がかかり、国が目指す2月末の完了は達成できない見通しだ。

 高齢者施設などではクラスター(感染者集団)の発生が相次ぎ、県内で2月以降に確認された高齢者・障害者施設のクラスターは19件に上る。重症化しやすい高齢者らの感染が急増すれば医療体制にも影響する。

 ワクチンは感染防止だけでなく、追加接種で重症化を防ぐ効果があるという。自治体は希望者に対する早期のワクチン接種に力を注いでもらいたい。

 収束が見通せない中で気になるのは、岸田文雄首相が第6波の「出口戦略」へのシフトを始めていることだ。

 首相は沖縄県など5県の重点措置を20日で解除したのに続き、本県など残る31都道府県についても期限の3月6日での全面解除をうかがう。社会経済活動の本格化を図る狙いだ。

 ただ今後、オミクロン株の派生型「BA・2」が拡大すれば、感染者数が増加に転じると指摘する専門家もいる。

 出口へどうかじを切るか、首相は感染状況を見極め、慎重に方向を探ってもらいたい。