合憲と判断されたが、なお格差が残る。現状のままとせず、国会は抜本的な選挙制度の見直しに本腰を入れるべきだ。

 「1票の格差」が最大3・03倍だった2022年7月の参院選が、投票価値の平等を求める憲法に違反するかどうかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁は格差を合憲と判断した。

 参院は、16年選挙で、都道府県を単位とする選挙制度を一部見直し、人口の少ない4県で隣接県同士を合区する制度を導入した。22年選挙が3度目だった。

 全国14高裁・高裁支部の訴訟16件では、違憲1件、違憲状態8件で、合憲は7件だった。

 最高裁は、5倍前後だった格差が合区導入後3倍程度で推移し、拡大傾向も見られないとして「違憲の問題が生じる程度の著しい不平等状態だったとはいえない」と判断した。

 ただ、一層の是正は「喫緊の課題だ」とも述べ、現行制度の抜本的見直しも含めて方策を講じていくことを国会に要請した。

 合憲とはいえ、現状を変える必要がないとお墨付きを与えたわけではない。国会には引き続き格差解消への取り組みが求められる。

 注目されるのは、判決が、合区導入以降の選挙への関心や投票行動に影響を与えている問題に初めて言及したことだ。

 合区対象の4県で投票率低下や無効票増加が生じた点を踏まえ、一層の選挙区の見直しには慎重な検討と一定の時間が必要とした。

 都道府県単位にこだわらない抜本的な選挙制度の見直しも考えられると指摘した。

 格差縮小には新たな是正策が必要になる。だが合区には、全国市長会や全国知事会が解消を求める決議をするなど反発は強い。

 合区した選挙区では自県以外から候補者が擁立された地域で有権者の無関心を招いていると指摘される。地方の懸念はもっともだ。

 最高裁は合区導入後の参院選を巡り、今回を含め3度合憲判決を出したが、いずれも合区維持が前提だった。仮に解消するには格差拡大の防止策が不可欠となる。

 難しいのは、地方の人口減少が進み、都市との格差がさらに広がる可能性があることだ。

 投票価値の平等の実現は憲法の要請だ。ただ、合区に象徴される「数的な不平等」解消に重きを置いた改革を進めれば、人口の少ない地方の実情に通じた議員を選ぶことが困難になるといった「質的な不平等」が生じかねない。

 判決は選挙制度を含む参院のあり方の抜本的な改革を求めたものといえる。国会での議論が停滞すれば今後、最高裁の判断が厳しい内容に変わる可能性もあろう。

 国会は、有権者の政治への関心を薄れさせず、地域の声を反映できる選挙制度の設計に党派を超え真剣に取り組む必要がある。