「第2の経済大国」の力に物を言わせ、勢力圏を広げてきた10年だが、影響力に陰りが見える。

 世界経済のブロック化で対立を深めず、新興・途上国のニーズをくみ上げるよう構想実現の方法を見直すべきだ。

 中国が進める巨大経済圏構想「一帯一路」の国際会議が北京で開催された。習近平国家主席は基調講演で、構想が世界の発展を後押しし「国際協力で成果を上げた」と実績を誇示した。

 一帯一路は中国を起点に陸路と海路で世界各地をつなぐ構想で、習氏が2013年に提唱した。参加国は約150カ国で、164カ国・地域が加盟する世界貿易機関(WTO)に匹敵する。

 中国は鉄道や港湾などのインフラ整備を通じた沿線国の開発を支援し、国際的な影響力を高めてきた。直接投資は14年の100億ドル(1兆4800億円)強から21年は約200億ドルに倍増した。

 一方、低所得国が中国から受けた巨額融資の返済に苦しむ「債務のわな」が深刻化している。先進7カ国(G7)で唯一参加するイタリアが離脱を検討するなど、ほころびが目立つ。

 今回の会議で首脳級が出席したのは二十数カ国とみられ、前回19年の38カ国を下回ったもようだ。

 反スパイ法が象徴する強権的な政治体制や経済安全保障の観点から、中国と距離を置く国が増えたと思われる。

 習氏は環境分野での協力強化や科学技術分野での支援など8項目の行動指針を打ち出した。

 規模追求からの転換を表明し、「質の高い発展」を目指すとしたのは、過剰融資や乱開発といった課題を抱える中で参加国の結束を図るためとみていい。

 過剰融資のしわ寄せは中国自身にも及ぶ。対外債務や金利の減免に応じることが増えて、貸し手である中国の銀行を圧迫、アフリカなど高リスク国への融資に慎重になっているとされる。

 中国国内では新型コロナウイルス禍からの景気回復が遅れる中、不動産不況が長引き、経済減速が不安視されている。

 世界経済全体に影響が広がらぬよう、中国には不動産やインフラ投資に依存した従来の成長モデルから転換することを求めたい。

 会議にはロシアのプーチン大統領が招かれ、習氏との会談で両国間の貿易額を2千億ドル(約30兆円)に引き上げる目標が年内に達成されると述べた。

 米欧の制裁や戦費拡大に苦しむロシアにとって中国の存在は命綱だ。識者は「経済会議というより反米会合」と指摘する。

 米国は一帯一路に対抗してインド、中東、欧州をつなぐ経済回廊構想を提起するが、中東情勢の混乱で先行きは見通せなくなった。米欧主導の国際秩序への対抗軸形成を急ぐ中国を注視したい。