水俣病と同じ症状がありながら患者と認定されない被害者の救済につながるか。道筋を示す判決となるか注目したい。

 水俣病被害を訴える新潟市などの男女151人が損害賠償を求めている新潟水俣病第5次訴訟の最終弁論が新潟地裁で行われた。

 審理を終えた47人が次回期日で結審する見通しで、判決期日が来年4月18日に指定された。残る104人の審理は継続する。

 被告の国と原因企業の昭和電工(現レゾナック・ホールディングス)に、1人当たり880万円の損害賠償を求めている。

 原告は、国の基準で水俣病と認められていなかったり、2009年に施行された水俣病特別措置法(特措法)に基づく救済を受けられなかったりした人だ。

 裁判は提訴から10年近くたつ。原告の平均年齢は74歳を超え、29人が亡くなった。

 支援者らが掲げる「生きているうちに解決を」のスローガンを、被告や私たちは社会全体で重く受け止めねばならない。

 最終弁論の意見陳述で、80歳の原告団長の皆川栄一さんは「全ての被害者救済につながる歴史的判決を願う」と求めた。

 60代の女性は「自分が水俣病だと証明するのにどうして10年も必要だったのか」と訴えた。

 同様の訴訟では、大阪地裁が9月に原告全員を水俣病と認める判決を出した。

 特措法による救済を2年余りで締め切り、救済対象の地域と年代を区切ったことなどを強く批判した。国の認定基準の枠組みを大きく超えて賠償を命じた画期的な内容だと断言できる。

 新潟の原告や弁護士らは「国の主張がほとんど退けられた」「水俣病問題を完全に終わらせる」と第5次訴訟への大きな追い風になると期待している。

 残念なことに、国や熊本県などは「過去の判決と大きな相違がある」として控訴した。

 新潟地裁を含む係争中の訴訟を考慮したとみられるが、政治判断で控訴を見送ったハンセン病を巡る訴訟などの例があることを国は忘れてはならない。

 第5次訴訟は、九州に続く「第二の水俣病」を発生させ、被害を拡大させたとして国の対応を問題視、患者認定や救済制度の問題とともに大きな争点となっている。

 新潟水俣病ではこれまで国の賠償責任を認めた判決がない。原告側は公害を繰り返さないためにと追及に力を注いできた。

 発生を公式確認した1965年以前の段階で、国は昭和電工の操業状況から患者の発生を予見し、防ぐことができたかどうか。司法の判断を待ちたい。

 原告は手足のしびれなどの症状に長年苦しみ続けている。その苦痛を解消する一歩となる判決が示されることを願う。