読書週間が始まった。戦後間もない1947年に「読書の力によって、平和な文化国家を作ろう」とスタートした運動だ。

 今年の標語は「私のペースでしおりは進む」。文化の日を中心に11月9日までの2週間、各地で本に親しむイベントも開かれる。

 中東やウクライナをはじめ世界で戦火がやまない中、自由に本を選び、読むことができる平和の大切さをかみしめたい。

 出版文化産業振興財団の昨年9月時点の調査で、全国の456市町村(26%)に書店がないことが分かった。町村では全国の半数近くが空白域だ。書店数はこの10年で約3割も減少している。

 新潟日報社の今年6月の聞き取りでは、県内6町村に書店がなく、5市町村は1店だけだった。

 公立図書館がない町村も多い。図書館がない全国の市町村は2割以上で、町村に限ると4割を超す。読書環境の地域格差が深刻だ。

 書店や図書館は地域の文化発信拠点となっていることが多い。地域によって本に触れる環境に差があると、子どもの情操面に影響しないだろうか。

 「まちの書店」が姿を消した背景には、人口減少による経営難や娯楽の多様化、インターネット販売の台頭などがあるだろう。

 経営が厳しさを増す中、書店主導の流通体制の構築を目指して誕生した新会社に注目したい。

 紀伊国屋書店と、「蔦屋書店」などを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)、出版取次大手の日本出版販売が共同出資して設立した。

 効率的な仕入れ実現のため、3社で販売データを共有、書店と各出版社が直接取引契約を結ぶよう交渉を進める。返品率を下げ、利益を上げやすくするという。

 県内でも、地域おこし協力隊員による個性的な品ぞろえの店や、本を車に積んだ移動式の店など、新たな書店スタイルを模索する動きが出ていることに期待したい。

 残念なのは、若者の多くが全く本を読んでいないという調査結果があることだ。

 2001年生まれを対象にした文部科学省の継続調査では、この1カ月に読んだ紙の書籍数が「0冊」と答えた人は62・3%だった。電子書籍についても「0冊」が78・1%を占めた。

 10歳当時に尋ねた調査よりも、読書量は大きく落ち込んでいる。読書習慣を維持する取り組みが欠かせないと言える。

 本紙読書面「にいがた人の本棚」では、県内各分野の著名人が座右の書などを紹介している。若い頃に出合った一冊の本によって人生の進路を決めた逸話は、私たちの参考になるだろう。

 読書は時代や国境を越えて、未知の世界の扉を開けてくれる。今秋、心に残る1冊との出合いがあるといい。