人権に対する意識の希薄さに改めてあぜんとする。国会議員の任に適しているのか甚だ疑問だ。

 そうした言動を承知で重用する政権や政党の責任は非常に重いと言わざるを得ない。

 自民党の杉田水脈(みお)衆院議員がブログで特定の民族や文化への侮辱的な投稿をしていたことに関し、大阪法務局は今月、差別的投稿3件と引用されたサイト2件の計5件を人権侵犯と認定した。

 札幌法務局も先月、人権侵犯があったと認定し、杉田氏にアイヌ文化を学び、発言に注意するよう「啓発」した。

 認定されたのは、2016年に開かれた国連女性差別撤廃委員会の参加者に関し、当時落選中だった杉田氏が書き込んだブログやX(旧ツイッター)の投稿などだ。

 「チマチョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさんまで登場」「同じ空気を吸っているだけでも気分が悪くなる」としていた。

 明らかに人を侮辱している。国会議員でなかった時でも許される表現ではない。認定は当然だ。

 救済を申し立てたアイヌ当事者らへの人権侵犯が認定された後も杉田氏は、Xに「非公開の案件について申し立てた方々がマスコミに説明しているのも解せませんが」と記し、不快感を示した。

 真摯(しんし)に反省しているのか、疑問符がつく。当事者らに矛先を向けて自己正当化し、開き直っているようにも映る。

 杉田氏を巡っては、自民で議員になってからもLGBTら性的少数者を「生産性がない」と月刊誌に寄稿するなど不適切な言動があった。第2次岸田改造内閣で総務政務官に就いたが、一連の言動を追及され、昨年末に更迭された。

 問題なのは、その後も岸田文雄首相が杉田氏を党の環境部会長代理に置いたことだ。資質に問題があることは分かっていたはずだ。重用する首相の人権感覚、任命責任が改めて問われよう。

 そもそも杉田氏を国会議員としてきたのは自民である。安倍晋三氏が首相だった17年衆院選で比例代表中国ブロックの名簿上位に処遇した。次期衆院選での自民の対応が注目される。

 気がかりなのは、杉田氏を批判する声が、所属する自民安倍派など党内で広がっていないことだ。

 愛国保守をアピールする杉田氏に好意的な保守層を刺激すれば、選挙でマイナスになるのではないかといった計算が透けて見える。

 Xでは杉田氏に同調し、ある民族を中傷する声も目立つ。レイシズム(人種差別主義)が国内に広がりかねず、危険だ。

 政権を担う政党が、議員の差別的な言動に厳しく対処しなくては、差別や中傷は容認されるという誤ったメッセージを国民に発信することにならないか。

 政権や政党は人権問題に対し、毅然(きぜん)とした姿勢を示すべきだ。