連日、子どもを含む多くの民間人が亡くなる事態に心が痛む。攻撃を拡大し、犠牲者がさらに増えることがあってはならない。国際社会は結束し、休戦へ向けての圧力を一層強めるべきだ。
イスラエルのネタニヤフ首相は、イスラム組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザで始めた越境作戦について、地上部隊を追加投入し、「戦争が新たな段階」に移ったと表明した。
ハマス掃討と人質奪還を目指し、本格的な地上侵攻への地ならしを進める構えだ。
戦車部隊がガザ北部に展開し、イスラエル軍の地上侵攻は既に始まったとの見方がある。空や海からの攻撃も激しい。
ガザの保健当局によると、ガザ側の死者は8千人を超えた。
地上侵攻が本格化すれば、さらに多くの民間人が巻き込まれる恐れがあり心配だ。
イスラエル軍の侵攻は困難視され、長期化が予想される。ガザの地下には長さ500キロ以上とされるトンネル網が張り巡らされ、ハマスはトンネルに潜みゲリラ戦を展開するとみられるためだ。
220人以上とされる人質は、地下施設で拘束されている可能性がある。イスラエル軍の侵攻により、かえって人質の命が危険にさらされることも想定される。
ガザの人道危機が深刻さを増していることも問題だ。国連人道問題調整室(OCHA)によると、空爆や燃料不足で現地の全35病院のうち12病院が閉鎖された。
イスラエルは、軍事利用されるとして燃料の搬入を認めず、ガザ・エジプト側の検問所で厳しく検査している。
衛生状況は悪化し避難所で感染症が広がっている。強奪も起き、公共秩序も崩壊し始めている。
イスラエル軍は、病院周辺の空爆を続けている。ハマスが病院を司令部として使い、トンネル網の入り口にしていると主張する。
民間人の被害が広がれば国際的非難が一層高まる。民間施設への攻撃は即刻やめるべきだ。
バイデン米大統領がネタニヤフ首相に、民間人保護を優先する国際人道法の順守を促した。周辺アラブ諸国も民間人の被害拡大に強い懸念を相次ぎ表明した。
国連はガザ情勢を協議する緊急特別会合で、イスラエル軍とハマスに「人道的休戦」を求める決議案を採択した。121もの国が賛成した重みをイスラエル、ハマス双方は受けとめてもらいたい。
ハマス非難を盛り込むよう求めた日本や米国、欧州の一部は反対や棄権した。
安全保障理事会では米国や中国、ロシアによる拒否権行使などで法的拘束力がある決議案はことごとく否決されている。
安保理の対応に失望の声が出ている。自国の利害で停戦へ結束できない大国の責任は極めて重い。
