子どもたちが安心できる居場所が必要だ。学びへの支援とともに、社会とつながっていける仕組みを整えていかねばならない。
全国の国公私立の小中学校で、学校を30日以上休んだ不登校の児童生徒は、2022年度に29万9048人と21年度より2割以上増え、過去最多となったことが文部科学省の調査で分かった。
本県は4759人で21年度より905人増え、7年連続で過去最多を更新した。
県教育委員会は、新型コロナウイルス禍で学校生活が制限され、友達づくりが難しかったことや、生活リズムが乱れやすく、登校する意欲が湧きにくかったことなどが要因とみている。
学校側が判断した不登校の理由は「無気力、不安」が最も多く、全体の半数を超えている。
ウイルス禍が落ち着いても以前のような生活に戻れず、苦しんでいる子がいるのではないか。
不登校の要因の一つであるいじめの認知件数は、22年度は全国では10・8%増えて約68万件超と過去最多となった。
いじめなど人間関係のトラブルを抱えた場合に、必ずしも学校に行かなくていいという意識は広がった。子どもが心身を守るためなら、学校から逃げることは選択肢の一つになるはずだ。
不登校への理解が深まり、無理をして学校に行く必要がないと考える保護者は増えている。
価値観が多様化し、学校に行けないのではなく、学校に行かない選択をする子もいる。
不登校の背景はさまざまだ。不登校の増加を問題視するより、その子たちをフォローする態勢を整える段階にあるだろう。
心配なのは、不登校の小中学生のうち4割近くが、学校内外で専門家らの相談や支援を受けられていないことだ。
将来への道を広げるには、不登校であっても、外部とのつながりを持ち続けることが欠かせない。
不登校の子どもらの居場所は現在、児童館などが活用されている。フリースクールなども重要な受け皿になっている。
国には居場所を運営する現場への厚い支援を求めたい。
文科省は来年度予算の概算要求に、オンライン授業の環境整備や、学校指導要領に縛られず授業時間を減らすことができる「学びの多様化学校(不登校特例校)」の設置促進などを盛った。
特例校は全都道府県と政令指定都市に設ける方針で、既に全国に24校あるが、本県は未設置だ。
空き教室を活用して学校内でサポートする「校内教育支援センター」の設置を進める動きもある。別室なら登校できるという子には向いている。
一方で家から全く出られないという子もいる。行政は多様なセーフティーネットを整えてほしい。
