どんなミスでも食物アレルギーのある子どもには命に関わるという認識を、教職員、調理員ら学校の全関係者で改めて共有する必要がある。安心できる給食の提供に向けて万全の対応をとりたい。
県内の小中学校などの給食で2022年度、アレルギー疾患がある児童生徒が誤って原因食物を食べた誤食などの食物アレルギーの事故が少なくとも54件あった。内訳は県教育委員会調査で22件、新潟市教委調査で32件だった。
県によると、事故の多くは誤食で、ほとんどが救急搬送された。新潟市は、アレルゲンを含む食材を初めて食べて発症する初発が12件、誤食が9件などとする。
食物アレルギーは、原因物質を食べた後、血圧低下や意識障害を起こし、死亡する危険性もある。深刻に受け止めるべきだ。
県は報告があるのは事故の一部で、アレルギーの子どもは増えているとみる。どの学校にも何らかの症状を持つ子どもがいるとの前提で、緊張感を持つ必要がある。
12年に東京都の小学校で給食を食べた児童が亡くなったアレルギー事故を受け、文部科学省は指針をまとめた。各教委などを通じ、学校や調理場などの現場でアレルギーを持つ子どもへの対応マニュアルを作るよう促している。
マニュアルがあっても守られているのか疑問なケースもある。
上越市の小学校で今年9月、児童がアレルギー物質を含む給食を食べ、一時入院する事故があった。児童はアレルギーがあることを学校に伝えていた。
献立担当の栄養教職員は、加工品の成分表を取り寄せて原材料を確認しておらず、給食調理員は、見ていない成分表を確認済みとしていた。二重のチェック態勢が人為的ミスで機能しなかった。
発症後の対応にも問題があったと言わざるを得ない。担任は給食中に腹痛を訴えた児童を1人でトイレに行かせた。児童は意識を失う可能性もあり、大人が常に見ていなければならなかった。
マニュアルでは緊急性の高い症状で、直ちに緊急注射薬を使い、救急車を呼ぶべきだった。だが担任は児童に注射や救急搬送の必要性を確認し、腹痛発生から注射をするまで約20分を要したという。
上越市では22年にも中学校で、教員が給食時に、原因物質が付着した可能性がある副菜をアレルギーのある生徒が拒否したのに配膳し、食べさせた事故があった。
生徒は食後に薬を飲み、症状は出なかったが、学校関係者全員で共有すべき命に関わる内容を、共有していなかった責任は重い。
再発防止に向けては、文科省の事故事例集などを読み込み、普段からわが事として考える姿勢が求められる。
関係者による研修会を通じ、マニュアルを守る当事者意識や理解度を高めることも欠かせない。