世界各地から「虐殺」と非難される攻撃を食い止めねばならない。戦闘により罪もない人たちの尊い命が奪われることは断じて許されない。
一刻も早い停戦が急務だ。国際社会は戦闘を止めるために、結束し、総力を挙げることが求められる。
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスが、イスラエルに3千発以上のロケット弾を発射し、240人以上を人質にした奇襲攻撃から7日で1カ月になった。
◆目に余る大規模空爆
イスラエルが報復としてガザを空爆して以降、おびただしい犠牲が生じている。
死者は日々増え続け1万1千人を超えた。ガザでの犠牲者は子ども4千人以上を含む1万人以上になった。国連によると、約7割が子どもや女性という。
戦闘はエスカレートし、戦火がやむ気配はない。
停戦を求めるデモが世界各地で行われているが、イスラエルのネタニヤフ首相は、ハマスが人質を解放しない限り「停戦はない」と明言している。残念でならない。
イスラエル軍による空爆は、目に余る。
難民キャンプや学校のほか病院周辺を標的にし、昼夜を問わず大規模攻撃を続けている。
イスラエル側は、ハマスが病院を軍事拠点にしているなどと主張しているが、病院や学校への攻撃は、国際人道法への違反が明らかだ。
ガザ側の犠牲者数は増加の一途をたどり、イスラエル側の死者約1400人対し、7倍以上になっている。自衛の範囲を超え、国連関係者は「不釣り合いな報復」と批判する。
ガザ保健当局は行方不明者は2千人を超え、うち1200人が子どもとしている。破壊された建物のがれきの下敷きになっているとみられる。
各地でイスラエルの攻撃を「ジェノサイド(民族大量虐殺)」と非難する声が高まっているのは当然だ。
イスラエル軍は地上侵攻も進め、ハマスが中核拠点を置くガザの中心都市、北部ガザ市の市街地に入ったとする。
ハマスは地下トンネル網を構築しており、ゲリラ戦の展開が予想される。イスラエル軍も相当の犠牲者が生じ、戦闘が泥沼化する恐れが強い。
心配なのは、ハマスが人質として拉致したイスラエル住民や外国人らが、地下に拘束されているとみられることだ。
イスラエルは人質の奪還を目指すが、ハマスは4日、イスラエル軍の攻撃で人質60人以上が行方不明になったと主張した。
戦闘が続けば人質も危険にさらされる現状を、ハマス、イスラエル双方は直視し、人質解放の交渉を優先すべきだ。
ガザは完全封鎖され、水や食料、医薬品、燃料などが極度に不足している。支援物資は足りず、人道危機は深刻だ。
戦火が中東各地に広がりかねないことにも警戒しなくてはならないだろう。
イスラエルとレバノン国境地帯では、イスラエル軍とレバノンの民兵組織ヒズボラとの交戦が激しくなっている。イスラエルと敵対するイランがハマスとヒズボラを支援している。
米国は、イランがガザ情勢の緊迫に乗じてかく乱を狙っていると危機感を抱く。
米軍はシリアにあるイラン革命防衛隊の関連施設を空爆し、親イラン組織がシリアやイラクで駐留米軍を攻撃していることへの報復措置だと主張した。
◆停戦へ日本は行動を
仲裁への主導的役割を果たすべき国連は、機能不全が憂慮されている。
安全保障理事会は、米国とロシア、中国の拒否権行使などで決議案が相次ぎ否決された。
戦闘開始以降、日本の存在感が乏しいことも見逃せない。
岸田文雄首相は国会で、イスラエルの空爆や地上作戦が国際法違反かどうかを問われると、「法的な判断をする立場にない」とし明言を避けた。
「人道的休戦」を求める国連総会の決議案を棄権するなど対応は消極的に映る。
日本はこれまでイスラエルとパレスチナのバランスを重視した外交を展開し、経済活動や人道的支援で双方と関係を築いてきた。先進7カ国(G7)議長国でもある。
首相は停戦に向け果たすべき役割があることを自覚し、行動に移すべきだ。
