強権的指導者により国際秩序がいとも簡単に踏みにじられ、主権国家が侵略された。暴挙というほかなく、到底容認できない。戦禍が罪なき人々の命を、平穏な日常を奪っている状況に胸が痛む。

 危惧するのは侵攻が大規模な紛争に発展し、さらに多くの死傷者が出ることだ。国際社会は結束を強め、軍事行動の拡大阻止へ全力を挙げてほしい。

 ロシア軍は24日、ウクライナに侵攻、首都キエフや各地の軍事施設を短距離弾道ミサイルなどで空爆した。

 ロシア軍は3方向から侵攻し支配地を広げている。北方のベラルーシから侵攻した部隊は25日、キエフ近郊に到達し、戦闘が発生した。

 プーチン大統領は24日の演説で、北大西洋条約機構(NATO)が軍備をロシア国境に近づけ、不拡大要求に応じなかったと米国を厳しく非難した。

 作戦は親ロシア派が一部を実効支配する東部ドンバス地域の市民保護とウクライナの非軍事化が目的と強調し、占領は計画していないとした。

 ウクライナはロシア攻撃の意図はないと繰り返し表明し、NATOへの早期加盟の見通しもなかった。にもかかわらず侵攻を決断したのはなぜか。その疑問への満足な説明はない。

 プーチン氏のこれまでの言動から浮かび上がるのは、ウクライナがロシア攻撃の前線基地になるとの懸念など独善的ともいえる世界観だ。

 侵攻は、自らの疑心暗鬼に突き動かされたように見える。こんなことがまかり通れば世界は不安定化するだけだ。大国の指導者としての資質に疑問符を付けざるを得ない。

 ロシアは二大核保有国の一つだ。プーチン氏が演説で「われわれに攻撃を直接加えれば、不幸な結果となるのは明らかだ」と核戦力行使を示唆したことも危う過ぎる。

 バイデン米大統領はウクライナへの侵攻を受け、ロシアの最大手銀行の取引制限や先端技術関連の輸出規制など強力な追加経済制裁を発表した。日欧なども足並みをそろえる。

 軍事行動阻止へ、国際社会は力による現状変更を認めないとの毅然(きぜん)とした姿勢を示し、実効性ある制裁を加えてほしい。日本も国際社会の一員として厳しく対処するべきだ。

 看過できないのは、プーチン氏が第2次大戦後に築かれた国際秩序にあえて挑んだように映ることだ。

 ロシアの攻撃開始は、紛争回避を目指して国連安全保障理事会の緊急会合が開かれているタイミングだった。安保理常任理事国が、確信犯的に国連を裏切ったに等しい。

 日本にとって大きな気掛かりは、侵攻がアジアの情勢に与える影響だろう。台湾統一を目指す中国や、核開発や弾道ミサイル実験に力を入れる北朝鮮はどう見ているか。

 侵攻が世界のさらなる混迷を招かないよう、国際社会が適切に対処しなければならない。