国にとって不都合な事実を明かさずに申請したことになる。国の対応は信頼を得られない。

 沖縄県の承認に影響を与えた可能性がある。国は当時の認識と対応を説明してもらいたい。

 沖縄県名護市辺野古の米軍基地建設を巡り、防衛省沖縄防衛局が埋め立て申請する前の2007年の報告書で、海底に軟弱な地層が存在し、基地の設計に追加のボーリング調査などが必要と結論付けていたことが分かった。

 防衛局は追加調査をしないまま、地盤に大きな問題はないとして、13年に埋め立てを申請し、県の承認を得た。

 申請書には、長期にわたり沈下する軟弱層は確認されていないと記載された。護岸の種類や工法もそれが前提となった。

 報告書の内容が申請書に反映されていれば、工期の延長や工事費の増大があらかじめ明らかになっていたはずだ。

 国土交通省の省令などは、施設の設計で、地盤を含む自然条件を適切に考慮して安定が損なわれないようにすることを求めている。これに違反する可能性がある。

 報告書を反映しなかった理由を、防衛局は答えるべきだ。

 防衛局は承認を受けた後の14年にボーリング調査を開始した。軟弱地盤の存在を認めたのは、埋め立て地への土砂投入が一部で始まった後の19年のことだった。

 工期は当初想定の5年から約9年3カ月に延びた。総工費は約9300億円と約2・7倍に増額され、さらに増える見通しだ。

 国は20年に設計変更を県に申請したものの承認されず、法廷闘争に発展した。知事に代わって承認する地方自治法の代執行に向けて提訴し、先月30日に結審した。

 代執行は県の自主性を損なうもので、容認し難い。国は対話による解決策を探るべきだ。

 沖縄では直近3回の知事選や、7割以上が埋め立てに反対した19年の県民投票で辺野古移設反対の民意が示されながら、国にはないがしろにされてきた。

 今回明らかになった申請書の対応も辺野古移設ありきの姿勢が透ける。県民の根強い反発や不信感がさらに強まる懸念がある。

 人口密集地にあり「世界一危険な米軍基地」と呼ばれる普天間飛行場(宜野湾市)の県外や国外移設を求める県に対し、国は辺野古が「唯一の解決策」とし、普天間の危険性の早期除去が必要だと主張してきた。

 1996年の日米両政府合意で5~7年以内とされた普天間返還は、仮に代執行が認められ、軟弱地盤改良工事に着手できても2030年代半ばになり、早期の危険性除去にはつながらない。

 国は辺野古移設に固執するが、沖縄の重い基地負担をどう軽減するかという根本的な問題にこそ、真摯(しんし)に向き合わねばならない。