結果次第では日米関係が大きく変わる可能性がある。対中国、対ロシアの姿勢に変化を来せば、世界が動く事態もあり得るだろう。選挙戦を見守りつつ、どんな影響を及ぼすのかを見極めたい。
2024年米大統領選は、来年11月5日の投開票まで1年を切った。再選を目指す民主党のバイデン大統領に対し、政権奪還を目指す共和党の候補指名争いはトランプ前大統領が独走している。
両氏の大接戦となった前回20年大統領選と同じ構図になる公算が大きくなっている。
バイデン氏は長引くインフレや、パレスチナ自治区ガザ情勢でのイスラエル寄りの対応などが批判され、支持率は過去最低だ。80歳という高齢への懸念も強い。
トランプ氏は議会襲撃などで起訴され、党内穏健派は敬遠する。対抗馬の罵倒に終始し、分断政治を嫌う無党派層を取り込める見通しも立たない状況だ。
熱狂なき再対決だと言える。米世論調査会社は先月、成人の6割以上が、民主、共和両党は「お粗末」だとして、第3の選択肢が必要だと考えていると指摘した。
変化を望む有権者の受け皿として、無所属で出馬表明した候補に注目したい。
その一人、ロバート・ケネディ・ジュニア氏は政界屈指の名家出身だ。掲げる主張はリベラル、保守双方から一部の層を引きつける。
全米規模の組織力で劣るため当選の公算は小さいが、激戦州での二大政党候補の浮沈に影響を及ぼしかねない。
最近の米紙世論調査によると、激戦が予想される6州のうち5州でトランプ氏が優勢になった。
投票先を決める上で重視するテーマは、57%が雇用や税金、生活費などの経済問題で、現政権が掲げる人工妊娠中絶の権利保護や銃規制、民主主義の価値といった問題は29%にとどまった。
バイデン氏の経済政策「バイデノミクス」の是非が問われる。大企業や富裕層への増税、電気自動車(EV)普及などの気候変動対策に支持が集まるかが焦点だ。
一方、トランプ氏が返り咲けば再び「米国第一」を主張し、気候変動問題を軽視してEV推進を撤回、日本車メーカーは経営戦略の見直しを迫られかねない。
日米関係は「米国がくしゃみをすれば日本が風邪をひく」と例えられる。政権交代で同盟関係より米国の実利優先に転換すれば、日本に安全保障上のリスクが生じる恐れもある。
対中国を念頭に、米主導で昨年発足した新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み」(IPEF)の先行きも見通せなくなる。
ウクライナ侵攻やガザ攻撃などに国際社会が結束して対応しなければならない時代だ。その要の米国トップを決める選挙を私たちも注視していかねばならない。