赤ちゃんや、けがを負った人たちが次々と亡くなる惨状を止めなければならない。病院への攻撃は国際人道法に明白に違反し、決して許されない。イスラエル軍は攻撃を即刻やめるべきだ。
パレスチナ自治区ガザで地上侵攻を続けるイスラエル軍が、複数の病院を直接攻撃している。15日にはガザ北部地区最大のシファ病院に突入した。敷地内に戦車が入ったとの情報もある。
イスラエル軍は、シファ病院の地下にイスラム組織ハマスの司令部があると主張している。患者や医療従事者、避難民ら数千人が残っており、被害の拡大が心配だ。
中東メディアによると、シファ病院では燃料枯渇による電力不足のため、集中治療を受けていた人たちや赤ちゃんを含め多数が亡くなった。保育器の新生児も危険な状態にあるという。
病院には多くの遺体があり、ガザ保健当局は病院敷地内に遺体を集団埋葬したと、明らかにした。
世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長はX(旧ツイッター)に「シファ病院はもはや病院として機能していない」と投稿した。憂慮される事態だ。
ほかの病院も敷地内で銃撃戦が続き砲撃音がやまず、病院が戦場化している。
イスラエル軍は病院の地下には、ハマスが拘束した人質がいたことを確認したと主張した。ハマスは否定している。
いかなる理由があろうと、弱者や民間人の命を奪う行為は、正当化できることではない。
ガザ全体では35の病院があるが、燃料枯渇などで、北部の全病院を含む25が医療活動を停止した。残る10病院も医薬品や燃料が不足するなど、人道危機が一層深刻になっている。
WHOによると、12日までに医療機関への攻撃は137回あり、少なくとも医療従事者16人を含む521人が死亡したという。
WHOを含む国連3機関は病院攻撃の停止に向け「即時の人道停戦を実現するため、国際社会の断固たる行動が必要だ」とする「緊急行動」の声明を出した。
ガザでは、子どもの犠牲が多い。国連のグテレス事務総長は「ガザが子どもたちの墓場になっている」と訴えた。
残念なのは、ハマスが約240人を人質として拘束しているため、イスラエル国内に停戦を求める声が少ないことだ。
ハマスは、人質を盾にすることは許されない。早急に解放し、和平の道を探るべきだ。
停戦に向けた決議で一致できないなど、これまでの国際社会の対応は歯がゆい。
各国はそれぞれの思惑を優先するのではなく、ガザで起きている悲劇を直視し、これ以上の犠牲者を出さぬよう停戦と人質解放の実現へ全力を挙げねばならない。
