補正予算は、年度途中で特に緊要になった経費の支出に対して認められるものだ。趣旨に沿うかどうか、緊急性や規模の妥当性について十分な精査を求めたい。
経済対策の財源を裏付ける国の2023年度補正予算案が衆参両院で審議されている。
支出に当たる一般会計の歳出は13兆1992億円で、岸田文雄首相が「国民への還元」とする減税策の対象外となった低所得世帯への給付金予算などが含まれる。
ガソリンなどの燃油や電気・都市ガス代を抑える補助金の追加分も計上された。寒冷地や地方には重要な支援だが、延長が繰り返され、財政負担は膨らんでいる。
補正予算案により、23年度の歳出総額は127兆5804億円となる。補正予算を2回組んだ22年度の132兆円は下回るものの、100兆円前後だった新型コロナウイルス禍前をしのぐ。
報道各社の世論調査で、経済対策を「評価しない」と答えた人が「評価する」をはるかに上回ったのは、対策の効果やばらまき的な支援の在り方を疑問視する国民が多いことを表したのだろう。
補正予算案には、反撃能力(敵基地攻撃能力)にも使う国産の長射程ミサイルを含む弾薬の早期取得費なども含まれ、防衛省は8130億円を計上した。
マイナ保険証を使った患者が増えた医療機関や薬局に補助金を交付する費用も盛り込まれ、伸び率が大きいほど補助金を増やす。
補正予算案に計上する緊急性があるか見極めねばならない。
気になるのは、複数年度にわたり支出する基金に投じる経費として、一般会計と特別会計から計4兆3091億円が計上された点だ。27基金に積み増し、4基金を新設する。数千億円規模だったウイルス禍前とは桁違いだ。
基金には、毎年度予算を組まなくても複数年度分の資金を確保できる利点がある一方、不要な積み上げで管理費がかさみ、無駄の温床と批判される。補正予算に計上する妥当性が問われる。
財務相の諮問機関の財政制度等審議会は、24年度予算編成に向けて意見書である建議をまとめ、ウイルス禍などで膨張した支出を「平時に戻す」よう求めた。
金利が上昇傾向にある中で、国債の利払い費が急増するリスクを念頭に置いた財政運営の必要性を指摘するのは当然だろう。
補正予算案で政府は歳入の7割近くを国債で賄う。首相主導の減税は補正予算案の枠外だが、実施されれば税収減の要因となり、24年度予算も国債を増発して穴埋めせざるを得ないのは明白だ。
政府は、歳出を平時に戻す方針を掲げていたはずであり、このままでは言行不一致になる。
将来世代にツケを回さないための努力が必要だ。予算の無駄を徹底して排除しなくてはならない。
