緊張を高める挑発行為を強く非難する。国際社会は圧力を強め、平和と安全を脅かす北朝鮮の度重なる暴挙を止める手だてを講じねばならない。
北朝鮮は、朝鮮中央通信を通じ、21日午後10時42分に軍事偵察衛星を打ち上げ、成功したと発表した。同54分に地球周回軌道に進入させたとしている。
日本政府は、軌道への投入は確認していない。韓国軍は軌道に進入したとするが、正常に作動しているか否かは、さらなる分析が必要だとする。日本は米国、韓国と協力し警戒・監視体制を強めていかねばならない。
日米韓3カ国は、弾道ミサイル技術を使った発射は国連安全保障理事会決議への違反だとした。国際社会に対する深刻な挑戦だとの認識を共有したのは当然だ。
金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記は9月に、ロシアのプーチン大統領と会談し、プーチン氏は両国の軍事協力の強化に意欲を示した。
北朝鮮は5月と8月に打ち上げに失敗していたが、ロシアの支援で技術力を向上させた可能性がある。日本の安全保障上、脅威が高まることが懸念される。
北朝鮮は22日午前0時から12月1日午前0時の間に発射すると通報していたが、予告時間より早い発射だった。
通告した時間を守らなかったことも許されない。
発射された1発が分離し、一つは予告区域外の朝鮮半島西約350キロの東シナ海に落ちた。二つ目は、沖縄本島と宮古島の間の上空を通過し、予告区域内の太平洋に落下した。
岸田文雄首相は「国民の安全に関わる重大な事態だ」と述べた。
被害情報はなかったものの、どこに落ちるかは分からず、危険であることは言うまでもない。
政府は、全国瞬時警報システム(Jアラート)を発令した。深夜の発令に、対象地域の沖縄県をはじめ、全国に不安を抱いた人がいただろう。
看過できないのは、北朝鮮が今後、早期に複数の偵察衛星を追加で打ち上げるとしていることだ。
偵察衛星を保有する狙いは、朝鮮半島有事を念頭に米韓の軍事動向を事前に察知するためだと指摘されている。
朝鮮中央通信は、衛星打ち上げは戦争準備態勢向上に大きく寄与するとした。
朝鮮半島情勢が緊迫し、心配だ。韓国は対抗措置として、2018年に締結した南北軍事合意の効力を一部停止することを決め、軍事境界線付近での偵察・監視活動を復活させた。
北朝鮮の友好国である中国は「関係各国が抑制し、意義ある対話を行うよう望む」と呼びかけた。
中国は緊張緩和実現のため、北朝鮮に自制を求めるなど大国としての役割を果たしてもらいたい。
