合意が確実に履行され、人質が無事に家族の元へ帰ることを期待する。戦闘休止でガザの人道危機を食い止め、恒久的な停戦につながる道を開きたい。

 パレスチナ自治区ガザでのイスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘は、24日午前7時(日本時間同日午後2時)、4日間の休止期間に入った。

 合意に基づく休止は、10月7日にハマスの奇襲攻撃で戦闘が始まって以来、初めてだ。ガザ全域が対象となる。

 ハマスは期間中に、人質230人以上のうち女性や子ども計50人を解放する。第1弾として計13人の引き渡し準備を進めてきた。

 人質が連行されて50日近くになる。ガザの地下トンネルに拘束されているとみられている。

 砲撃が続く中で、恐怖と戦っているに違いない。物資が不足しており、健康状態も心配だ。

 イスラエルは、ハマスが人質を追加で10人解放するごとに、さらに1日ずつ、戦闘を休止すると表明している。休戦期間が延長される可能性がある。

 ハマスには人質全員の早期解放が求められている。人質がいる限り恒久的な停戦は困難で、ガザの人命が奪われ続けることをハマスは直視しなくてはならない。

 一方、イスラエル側は病院や国連の施設を標的にし、罪のない人の命を奪うといった度を超えた攻撃を慎み、停戦を探るべきだ。

 人質解放に伴い、イスラエルは拘束するパレスチナ人の一部を釈放する見通しだ。

 休止中は人道支援物資の搬入も合意している。ハマスは、物資を積んだトラック200台と燃料を載せたトラック4台が毎日、ガザに入るとしている。

 十分な量の物資が確実に搬入され、民間人の犠牲抑制につながることが重要だ。危機的な状況にある医療現場の回復も急がれる。

 仲介役のカタール政府は休止の延長もあり得るとの見方を示す。

 懸念されるのは、ハマス壊滅を目指すイスラエル軍の方針に揺るぎがないことだ。

 軍報道官は「ガザ北部の制圧は長い戦争の最初の段階に過ぎない」とし、休止期間終了後、侵攻を拡大させる構えでいる。

 イスラエルの圧倒的な軍事力でハマス側は劣勢に立たされている。休戦中に疲弊した戦力を立て直す狙いもあるだろう。

 双方とも、休戦を次の戦闘への備えに充ててはならない。

 ガザ当局によると、ガザ側の死者は1万5千人に迫る。国連児童基金は5300人以上の子どもがガザで犠牲になったとし「子どもにとって世界で最も危険な場所だ」と訴えている。

 ガザを過酷な状況に置き続けてはならない。中東情勢安定のためにも、国際社会は双方への働きかけを強める時だ。