地方大学は、地元で暮らす若者や中高年に高等教育の場を提供する大事な存在だ。私立大の定員割れが続き、学校が存続できなくなる事態は避けねばならない。

 国内の学生の7割以上を受け入れる私大は魅力ある教育に努めるとともに、将来的な統合・再編も視野に入れた議論が求められる。

 加速する少子化を踏まえ、盛山正仁文部科学相は中教審に、高等教育機関の将来像の検討を諮問した。大学の統合・再編を議論の柱に、定員規模の是正に向けた政策につなげることを目的にした。

 諮問項目は、大学間連携や地域における質の高い高等教育の在り方、教育や経営に関する情報公開などだ。文科省は2025年3月までに答申を得たいとする。

 背景にあるのは、大学入学者の定員割れだ。少子化により18歳人口は、1992年は約205万人だったのに対し、2022年は約112万人だった。20~30年後には80万人前後まで減少すると文科省は推計する。

 日本私立学校振興・共済事業団によると、全国私大の53・3%に当たる320校で今春、定員割れした。50%超えは、35年ほど前の調査開始から初めてのことだ。

 私大は、学費が安い国公立と新入生を取り合うことになる。一部有名校を除き、行き詰まる学校の続出が懸念される。

 特に地方小規模校は厳しい。本県では今春、四年制私大14校の定員3557人に対し入学者数は3277人で10校が定員割れした。

 定員充足率は92・13%で、過去5年の最低となり、全国平均99・59%を大きく下回った。

 新型コロナウイルス禍の影響で、進学先の地元志向が一時的に高まったが、感染状況が落ち着き、関東圏など都市部への流出が戻ったとみられる。

 県内の私大は1990年には3校だったが、大学設置基準の緩和を受け、新たな設立が相次いだことも大きい。

 文科省は、2040年の充足率は現行定員だと本県は80・1%になると推計した。全国的に都市部より地方が落ち込む見通しだ。

 大学再編を検討しなければならない時期にきているのではないか。地方私大が次々と弱体化すれば、若者がさらに県外に流出し、地域の活力が失われかねない。

 県内では企業や商店街と連携し、地域に根ざした教育を実践している私大もある。地元就職を目指す若者を育み、中高年らの学び直しを支えてもいる。

 官民で改めて地元にある私大の価値を確認し、大切にしたい。

 私大側も、各校が特色ある学科や授業を用意し、単位互換などの連携をさらに進めて魅力を高める努力が必要だ。共通する事務作業の協力も課題の一つになろう。こうした取り組みを重ね、持続可能な運営を目指してもらいたい。