大麻類似成分を含むグミを食べた人の健康被害が相次いでいる。国は実効性ある規制を講じ、被害の広がりを抑えねばならない。
厚生労働省は、いわゆる「大麻グミ」の販売店にあった製品から検出された合成化合物HHCH(ヘキサヒドロカンナビヘキソール)を医薬品医療機器法に基づき指定薬物とした。
来月2日から規制対象になり所持や使用、流通が禁止される。違反には、3年以下の懲役または300万円以下の罰金を科す。
HHCHは、大麻由来の違法成分で幻覚や意識障害を引き起こすTHC(テトラヒドロカンナビノール)と構造が似ているが、規制対象にはなっていなかった。
このため東京や大阪などで、HHCHが含まれるグミを食べた人が、手足のしびれや吐き気といった体調不良を訴え、相次いで病院に搬送された。
祭りの会場で配られたケースもあり、子どもを含め不特定多数の人に被害が及ぶ恐れもあった。
あまりにも安易に入手でき、問題だ。対策が後手に回っていたように映る。規制は遅きに失したのではないか。
本県は被害が確認されていないが、県と県警が、同様の商品を販売している疑いのある複数の店舗に立ち入り検査を実施した。
懸念されるのは、規制対象ではないが似た成分を含む製品が新たに流通する可能性があることだ。
厚労省は健康被害が出るたびに規制対象を追加し、指定薬物は2432種類に上る。しかし、強化するたびに構造の一部を変えた物質を含む製品が流通する。
国の対応を「いたちごっこをやっているとしか思えない」との批判も出ている。
厚労省は、類似物質をまとめて規制する包括指定を目指す。被害が出る前に規制できる対策を急がねばならない。
注意したいのは、大麻類似成分を含む食品はグミだけではないことだ。クッキーやチョコレート、バターもあり、見た目が親しみやすく手を出しやすい。パッケージに果物などが描かれ抵抗感を小さくしている製品もある。
大麻は、他の違法薬物に手を出すきっかけになる「ゲートウエー(入り口)ドラッグ」とも言われ、若年層を中心に使用が広がっていることも心配だ。
警察庁によると、2022年に大麻関連で摘発された約5300人の約53%が20代で、20歳未満と合わせると7割に上る。今年に入り、大学の運動部員らの使用も相次ぎ判明した。
海外での合法化が「大麻は安全」という誤情報を招き、交流サイト(SNS)で拡大していることも要因とされる。
国や自治体といった関係機関は、大麻は危険薬物であると周知していくことが欠かせない。
