安全保障環境が悪化し、核兵器の脅威が高まっている。核廃絶への大きなうねりを呼び起こす会議にしたい。

 日本政府は会議に背を向けず、唯一の戦争被爆国としての責任を自覚し、核なき世界の実現へ向けた行動が求められる。

 核兵器禁止条約の第2回締約国会議が始まった。12月1日まで、米ニューヨークで開かれている。

 条約は世界中の核被害者の訴えを通じ採択され、2021年に発効した。核兵器を全面的に違法化した初の国際条約だ。

 今年11月上旬時点で93カ国・地域が署名、69カ国・地域が加盟しているものの、核保有国や、米国の「核の傘」の下にある日本は参加していない。

 22年の第1回会議では、いかなる核の威嚇も非難し、核なき世界の実現へ即時行動を呼びかける「ウィーン宣言」を採択した。

 しかし、核兵器の脅威は増し、「冷戦の最盛期並みに高まっている」との指摘もある。

 ウクライナに侵攻するロシアのプーチン大統領は核兵器の使用を示唆している。核を事実上保有するイスラエルはパレスチナ自治区ガザで戦闘の当事国になり、閣僚が核使用を「選択肢の一つだ」と発言した。

 東アジアでは中国が核弾頭保有数を増やしている。北朝鮮のミサイルや軍事偵察衛星発射で朝鮮半島の緊張は高まっている。

 第2回会議が、こうした状況にどう向き合い、議論を重ねていくかに注目したい。

 会議初日は、長崎での被爆者が演説し「核戦争が起きれば死の世界が残るだけだ」と訴えた。

 最終日には、核兵器の脅威に対処し、禁止と廃絶に取り組む決意を示す政治宣言を採択する見通しだ。核保有国に対し抑止論は容認しないとの強いメッセージになるとみられる。

 背景には、核保有五大国への不信がある。保有国が核拡散防止条約(NPT)での軍縮交渉義務を果たさず成果を上げていないからだ。昨年のNPT再検討会議は最終文書を採択できず決裂した。

 5月の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)は、核軍縮文書「広島ビジョン」で核抑止を正当化し、被爆者らを落胆させた。

 ドイツやベルギーといった北大西洋条約機構(NATO)加盟国の一部など、米国の核の傘に頼る国も会議にオブザーバー参加する中、日本政府が今回も参加しなかったことは残念だ。

 岸田文雄首相は「核兵器のない世界」の追求を掲げており、会議への不参加は矛盾している。

 世界の大多数の国が条約に賛同している。日本は被爆国として、核保有国との橋渡し役になることが求められる。核廃絶へ向けた行動は急務だ。どう歩むか、首相は改めて考えてもらいたい。