国内で起きた輸送機オスプレイの事故で初めて死者が出た。政府は米軍に墜落事故の原因解明と情報提供を要請し、再発防止策を徹底して講じるよう求めるべきだ。
米軍横田基地(東京)配備の輸送機CV22オスプレイが鹿児島県・屋久島沖で墜落した。搭乗員は8人で、海上で発見された1人の死亡が確認された。
現場は島の東側約1キロ付近とみられる。海上保安庁や自衛隊などは残る行方不明者の救助、捜索を急がねばならない。
目撃者によると、機体は180度ひっくり返った直後、左エンジン付近から火が出て、真っすぐ海に落ちた。機体を回収し、原因究明につなげたい。
オスプレイは山口県の岩国基地から沖縄県の嘉手納基地に向かう予定だった。米軍によると、嘉手納基地拠点の特殊作戦航空団所属で、通常の訓練中だった。
防衛省が米軍に、安全性が確認されるまでの飛行停止を要請したのは事故から半日余り後だった。既に計14回離着陸しており、対応が遅すぎたのではないか。
過去の事故同様、米側は機密保全や日米地位協定を盾に日本側の捜査を拒むことが予想される。
日本政府は米軍による事故調査への関与や情報提供を毅然(きぜん)と要求してもらいたい。
事故や不具合が相次ぐオスプレイの安全性には疑問がある。
昨年6月は米カリフォルニア州で海兵隊機が墜落して隊員5人死亡、今年8月はオーストラリアで3人が死亡した。
沖縄県では、2016年12月に名護市沖に不時着して大破したほか、飛行中にパネルや水筒が落下する事故も起きている。
今年9~10月には沖縄・九州の空港で計6機が緊急着陸した。米軍は「異常を知らせる警告が出た」などとしたが、詳細は不明だ。
今回の事故で住民の不安や怒りが強まるのは必至だ。米軍と政府は真摯(しんし)に受け止める必要がある。
気がかりなのは、千葉県内に暫定配備されている陸上自衛隊のオスプレイについて、佐賀市に駐屯地を建設して移す計画が進められていることだ。
台湾有事を念頭に置いた南西諸島の防衛力強化策の一環だが、駐屯地建設には地権者の漁業者らが反対している。
松野博一官房長官は事故後も配備計画を変更しない考えを示したが、まずは安全性の確保を最優先に考えるべきだろう。
本県では17、20年に上越市と妙高市にまたがる陸自関山演習場での日米共同訓練で、米軍オスプレイが飛来している。本県上空は地上60メートルの低空飛行訓練ルートの一部にも含まれている。
オスプレイの事故は遠い地での出来事ではない。安全性がしっかり確立されるよう政府の対応を注視していかねばならない。
