万博開幕まで500日を切っても国民の期待が高まっているとは言い難い。政府をはじめ主催者側は開催意義や全体像を示さねばならず、国民の理解を得るよう努める必要がある。
2025年大阪・関西万博を運営する日本国際博覧会協会は前売り入場券を発売した。入場券全体の販売目標を2300万枚とし、うち6割に当たる1400万枚を前売りでさばきたい考えだ。
運営費の大半を入場料収入で賄う方針で、協会は東京などでも販売促進のイベントを開き、周知を図っている。
だが盛り上がりに欠けている。販売は「ノルマ」が課せられた経済界が頼みの綱だが、個人分の売れ行きは見通せない。
共同通信社の11月の世論調査では、万博開催を「不要だ」との回答は68・6%で、「必要だ」の28・3%をはるかに上回った。
万博に対する負の印象が国民に広がっていることがうかがえる。開催を目指す主催者側はまず、規模や内容に関する多くの疑念を払拭しなければならない。
課題の一つは、会場整備費が資材費や人件費の高騰を理由に当初の約1・9倍、最大2350億円に膨張したことだ。
岸田文雄首相は臨時国会で「さらなる増額は想定していない」と明言したが、その5日後には会場整備費とは別に、国の負担が約837億円に上ることが判明した。
パビリオン「日本館」建設や途上国の出展支援の費用のほか、機運醸成費38億円も含まれている。
万博費用は総額3187億円となり、国費分は倍増することになる。十分な説明なく国民に負担を押し付けることは看過できない。
万博に参加表明している150超の国・地域のうちメキシコやエストニア、ロシアが辞退を表明した。他の国・地域まで辞退する「撤退ドミノ」が懸念されている。
海外パビリオンの建設遅れも重い課題としてのしかかる。
60カ国の56施設は自前で建設される予定だったが、着工された施設はない。協会はガイドラインではパビリオン完成を「24年7月」としていたが、もはや現実的とは言えないのではないか。
協会はことし8月になって、各国に工期短縮につながる建設方式を示したが、対応が後手に回った感は否めない。
万博の象徴に位置付け、350億円を投じる木造大屋根「リング」は閉幕後撤去する方針で、「無駄遣いだ」との批判がある。
万博全体での規模縮小や展示内容の見直しを検討してもいい。
今回の万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」で、持続可能な開発目標達成への貢献といった使命があるはずだ。
巨費に見合った開催意義を共有できなければ、国民の不満は一層高まりかねない。
