ロシアによるウクライナ侵攻から1年半以上がたち、関心の低下が危惧される。国際社会は停戦の実現のために、ウクライナへの支援を続けることが求められる。
ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアが実効支配する領土奪還に向けた反転攻勢の開始から半年を前に、共同通信などと首都キーウ(キエフ)で会見した。
中東パレスチナ情勢に世界の関心が集まり「ウクライナは忘れられてしまった」と述べた。現状は「ロシアの狙い通り」とし、世界情勢はロシアに有利な方向に動いているとの認識を示した。
ロシア軍撃退に欠かせない欧米の兵器供与といった支援が細りつつある状況への、重大な危機感の表れだと言えよう。
6月に始めた反転攻勢についてもゼレンスキー氏は「速やかに、たやすく進むとは想像しがたい」と、困難に直面していることを認めた。必要な兵器が不足していることなどが大きな要因だ。
奪還した面積は約300平方キロで、ロシアが占領するウクライナ領土約2割のうちの0・5%にも満たない。
膠着(こうちゃく)状態が続けば、武器や兵員で勝るロシアが有利になるのは明らかだ。来年は防衛に専念せざるを得ないとの見方も出ている。
状況は厳しいものの、ゼレンスキー氏は「ロシアが部隊を撤退させない限り停戦に応じない」と断言した。欧米が持ちかけたとされる和平交渉に関しても、領土を割譲してまで和平を求める考えはないとした。
自らの和平案である「平和の公式」への賛同国を増やし、ロシアを孤立化させ、撤退に追い込みたいとする。そのためにロシアに強い影響力を持つ中国の積極的な関与を求めた。
「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国にも支持を得られるよう、ウクライナは外交努力が欠かせない。
来年2月に、日本で2カ国間による経済復興推進会議が開催される。日本政府はインフラやエネルギーなどの面で、ウクライナの人々に役立つ支援をしっかりと打ち出したい。
心配なのは、ゼレンスキー政権の支持率が下がっていることだ。
キーウ国際社会学研究所が9~10月に行った世論調査では、大統領を信頼すると答えたのは76%で、昨年5月の91%から下落した。政府への信頼も39%と、74%から大幅に落ちた。
侵攻が長引き、国内の結束が揺らいでいるのではないか。政権内の不和を示唆する報道もあった。
会見でゼレンスキー氏は「自由と民主主義のために戦っている」と2度繰り返した。
ウクライナから目をそらせば、国際社会の秩序を破壊しようとするロシアの暴挙を認めることになる。忘れてはならない。
